国が打ち出す2つのエネルギー戦略、2030年と2050年の長期目標実現へ:法制度・規制(2/2 ページ)
経済産業省と内閣府がエネルギー分野の長期戦略を相次いで発表した。経済産業省は省エネの推進と再エネの拡大を中心に2030年のエネルギーミックスを実現するための施策をまとめた。内閣府は2050年までに温室効果ガスを大幅に削減する革新的なエネルギー関連技術の研究開発を推進する。
革新的な蓄電池や次世代の太陽光発電
一方の内閣府によるエネルギー・環境イノベーション戦略は文字どおり技術革新(イノベーション)に重点を置いている。AI(人工知能)やIoTを活用したエネルギーシステムの統合技術とシステムを構成する3つのコア技術、さらに7つの分野にわたる革新技術が対象だ(図3)。それぞれの技術を組み合わせて、2050年に世界で最先端の超スマート社会「Society 5.0」の実現を目指す。
7つある分野別の革新技術の中には、電気自動車の航続距離を700キロメートル以上に延ばせる革新的な蓄電池をはじめ、CO2を排出しない水素の製造・貯蔵・利用技術、発電効率を現在の2倍に高めた次世代の太陽光発電などが含まれている。
内閣府はエネルギー・環境イノベーション戦略の前段階として、2013年に「環境エネルギー技術革新計画」を策定した。合わせて37項目にわたるエネルギー関連技術のロードマップをまとめている。高効率石炭火力発電から地球観測・気候変動予測まで、2050年に向けた大まかな開発目標を設定した。
同様にエネルギー・環境イノベーション戦略の対象になった革新技術に関してもロードマップを作成して推進していく。この戦略を通じて2050年の温室効果ガスの排出量を現在から半減させる狙いだ(図4)。2015年12月にパリで開催したCOP21(国際気候変動枠組み条約第21回締結国会議)では、世界の気温上昇を2℃未満に抑えることで各国が合意した。
2050年までに目標を達成するためには、全世界で年間に300億トン以上の温室効果ガス(CO2換算)を削減する必要がある。このうちエネルギー・環境イノベーション戦略の革新技術を生かすことで、最大100億トン超を全世界で削減できると見込んでいる。実現までに克服すべき課題は数多く残っているが、エネルギー分野の革新技術で日本が世界をリードできる可能性は十分にある。
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