バイオマス発電がリアス式の海岸へ、太陽光や潮流も地域の電力源に:エネルギー列島2016年版(4)宮城(3/4 ページ)
宮城県では震災の影響でバイオマスの利用量が一時的に減ったが、再び新しいプロジェクトで盛り返してきた。森林資源や生ごみを使って電力を作りながら、農業や漁業と連携した循環型のシステムを構築する。広大な空き地にはメガソーラーが立ち上がり、海では潮流発電の実証にも取り組む。
津波の被害を受けた農地をメガソーラーに
宮城県では太陽光発電も順調に拡大している。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は全国で第5位に入る(図8)。すべての設備を運転できると、年間の発電量は県内の全家庭が消費する電力量を上回る。
すでに稼働した中では「いわぬま臨空メガソーラー発電所」の規模が大きい。岩沼市にある「仙台空港」の隣接地で2015年4月に運転を開始した(図9)。発電能力は28MWにのぼり、年間の発電量は2900万kWhを見込んでいる。一般家庭の8000世帯分に相当する電力量で、岩沼市の総世帯数(1万7000世帯)の半分近くをカバーできる。
この一帯は太平洋から近く、東日本大震災で津波の被害を受けた地域だ。津波による塩害に加えて地盤沈下が起こったために、農地として使えなくない土地が数多く発生した。そうした用途の見込めない広大な土地を活用できるように、岩沼市が太陽光発電事業者を募集してメガソーラーの実現にこぎつけた。
大規模なメガソーラーの建設は近隣のゴルフ場でも始まっている。仙台市にある「西仙台カントリークラブ」の27ホールのうち、9ホールを閉鎖して太陽光発電を実施する計画だ(図10)。合計25万平方メートルの用地に7万枚を超える太陽光パネルを設置して、発電能力は18MWになる。
さらに北部の大崎市の山中でも、ゴルフ場の跡地に57MWの巨大なメガソーラーを建設する計画が進行中だ。山岳地帯に広がる18ホールのゴルフ場を全面的に使って太陽光発電を展開する(図11)。2016年内に運転を開始する予定で、年間の発電量は一般家庭の2万世帯分に達する。
太陽光発電が急速に拡大していくと、天候によって発電量が大きく変動するために、地域に供給する電力が不安定になる可能性が生じてしまう。東北電力は太陽光発電の余剰電力で水素を製造して電力を安定化させるプロジェクトを2016年3月に開始した。
仙台市内にある研究開発センターの屋上に出力50kWの小規模な太陽光発電設備を設置する。さらに水素の製造装置と貯蔵タンク、水素で電力と熱を供給できる燃料電池をコンテナに収容して連動させる計画だ(図12)。蓄電池も併用しながら、太陽光発電の出力変動を水素と蓄電池の組み合わせで効率的に調整できるようにする。2017年3月から水素の製造に着手して、2年間にわたって研究開発に取り組んでいく。
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