バイオマス発電がリアス式の海岸へ、太陽光や潮流も地域の電力源に:エネルギー列島2016年版(4)宮城(4/4 ページ)
宮城県では震災の影響でバイオマスの利用量が一時的に減ったが、再び新しいプロジェクトで盛り返してきた。森林資源や生ごみを使って電力を作りながら、農業や漁業と連携した循環型のシステムを構築する。広大な空き地にはメガソーラーが立ち上がり、海では潮流発電の実証にも取り組む。
毎秒1メートルの潮流で5kWを発電
宮城県内では海洋エネルギーの研究開発プロジェクトも進んできた。太平洋に面した塩竈市(しおがまし)の沖合5キロメートルほどの場所に寒風沢島(さぶさわじま)と呼ぶ島がある。この島の船着き場の近くで日本初の潮流発電装置が稼働中だ(図13)。
発電装置の設置場所は隣の島との間隔が500メートルほどしかない「寒風沢水道」の中にある。水深6メートルの海底に発電装置2基を設置して、2014年11月から実証運転を続けている(図14)。発電能力は2基を合わせて5kW(流速1メートル/秒)で、陸上にある漁業協同組合の冷凍冷蔵庫(消費電力0.8kW)に電力を供給してエネルギー地産地消の可能性を検証中だ。
発電装置は海上に見える発電機を設置した上部と、海中にある垂直軸で回転する2枚の翼(ローター)で構成している。海中のローターが潮流を受けて回転して、海上の発電機を回す仕組みだ(図15)。ローターは上下2段の構成になっていて、翼の長さは縦方向に2メートル、回転直径は4メートルある。
これまでの実証結果では、潮流の速さが毎秒0.4メートルの状態で0.3kWの発電能力を得ることができている。さらに発電効率を高めるために、翼を4枚に増やすなどの改善策を実施中だ。一方で海中の装置に貝が付着して回転が遅くなる問題も生じている。東京大学を中心とするプロジェクトチームは2017年3月まで実証運転を続けて、発電装置の改良と保守の効率化に取り組んでいく。
2015年版(4)宮城:「太陽光で電力自給率100%に、被災地が最先端のスマートタウンへ進化」
2014年版(4)宮城:「千年先へ希望をつなぐ、復興に向けた再生可能エネルギー倍増計画」
2013年版(4)宮城:「被災地をエネルギー100%自給都市に、松島から気仙沼まで広がる再生計画」
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