日本をLNGのハブへ、G7北九州エネルギー大臣会合で発表:電力供給サービス(2/2 ページ)
経済産業省は北九州市で2016年5月1〜2日に開催されたG7北九州エネルギー大臣会合において、日本のLNGハブ化などの構想をまとめた「LNG市場戦略」を発表した。
健全で柔軟な国際LNG市場を確立へ
LNG市場戦略では「3つの基本要素」として「取引の容易性(Tradability)」「需給を反映した価格指標(Price Discovery)」「オープンかつ十分なインフラ(Open Infrastructure)」を挙げる。
取引の容易性としては、仕向地条項の撤廃に向けた取り組みを進めていく。既にシェールガスによりLNG輸出を開始する米国などは仕向地条項を付けないという契約なども行っており、これらを示しながら中東の輸出国に向けても交渉を進めていく方針だ。さらにLNGプロジェクトの立ち上げに関するファイナンスの方法などについても改善を進めていく。さらに燃料電池やLNGトラックなど国内外における新規ガス・LNG需要の拡大やLNG船の運用容易化に向けた取り組みを進めていく。
価格指標としては、健全な競争による価格指標確立に向け価格報告期間との対話の実施や価格指標育成の視点でのファイナンス支援などを行う。さらに東京商品取引所におけるLNGの先渡し取引についても支援していく。
オープンなインフラについては、ガスシステム改革で進められているLNG基地の第三者アクセスや情報開示に関係するルールについて検討を進めていく他、広域パイプラインや地下貯蔵施設などの関連インフラについても制度的な措置や公的支援の在り方を検討するとしている(図4)。
ガス自由化や水素との親和性
これらの取り組みを進めることで、日本を中心とした柔軟なLNG市場を育成するとともに、アジアにおける一大LNGハブとして取引の中心地となることを目指す。今後のLNG市場を見た場合、アジアのLNG需要が急増し、従来は輸出国だったマレーシアやインドネシアが輸入国に転ずる一方で、北米やオーストラリアなどが輸出量を増やす見込み。豊富な輸入量をベースに、これらの取引のハブとしての存在感を高めることを狙う。さらに、内需についても、ガス自由化や燃料電池を含む水素社会の実現に向けて、天然ガスの利用場所は広がると見られており、柔軟性のある国際取引を実現することで、市場変化にも対応できるようにしていく考えである(図5)。
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