連携深める東ガスと関電、まずLNGに関する提携で合意:電力供給サービス
電力システム改革などを背景に、提携の動きが加速している。多分野にわたる戦略的連携を検討してきた東京ガスと関西電力では、新たにLNG調達および、LNG火力発電所に関係する技術連携を進めていくことで合意した。
2016年4月の電力小売全面自由化をはじめとする電力システム改革により、従来地域寡占などで安定的経営を維持してきた電力やガスなどのエネルギー産業にも変革の時が訪れている。企業間競争が激しさを見せる中、競争力強化を実現するために企業間連携なども加速している。
東京ガスと関西電力は2016年4月11日、模索してきた戦略的連携の一連の取り組みの1つとして「LNG調達における弾力性向上に資する連携」と「LNG火力発電所の運転・保守にかかる技術連携」を進めていくことで合意した。
両社ではもともとLNG調達などで協力してきた関係があり、この枠組みを拡大し燃料調達、発電所運営・保守、電源開発および海外事業への共同参入など、さまざまな分野で多角的な戦略的連携を検討してきた。
今回合意した「LNG調達における弾力性向上に資する連携」は、2017年から始まる米国のコーブポイントLNGの新規調達を控え、相互にLNGを交換・融通することを決めた枠組みである。コーブポイントLNGはシェールガス由来のLNGであり供給期間は20年。契約数量は東京ガスが年間140万トン、関西電力が年間175万トン(図1)。従来もオーストラリアのプルートLNGなど同一プロジェクトからの調達においては協力をしており、今回も同様の枠組みで行う。
「LNG火力の運転・保守にかかる技術連携」については、両社がこれまで独自に行ってきたLNG火力の運転・保守にかかる人材育成のノウハウを共有するとともに、さまざまな運営課題の解決に向けた技術連携を行うことを目指したもの。それぞれの火力発電所運営における安全性、効率性を高めていくとしている。
両社は、今回の連携範囲にとどまらず、今後もさらに幅広い分野での協議を進めていく方針を示している。
エネルギー会社の企業間連携では、2015年4月に東京電力と中部電力が火力発電事業を統合した「JERA」を発足する(関連記事)など、さまざまな枠組みでの提携が拡大している。
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