時代を変える火力発電会社が4月30日に誕生、東京電力と中部電力の「JERA」:電力供給サービス
発送電分離に向けて改革を進める東京電力と中部電力が、火力発電の新会社を4月30日に設立する。燃料の調達から発電所の新設・更新までを共同で実施して、自由化後の電力市場で競争力を発揮する狙いだ。両社で6700万kWにのぼる既存の火力発電所の統合も2017年の春をめどに判断する。
新会社の名称は「JERA(ジェラ)」。日本(Japan)を代表する発電事業者として、新しい時代(ERA)を切り開く思いを込めた。キャッチコピーの「エネルギーを新しい時代へ」に、東京電力と中部電力の意気込みが感じられる(図1)。旧態依然の電力業界にあって、2016年4月の小売全面自由化、2020年4月の発送電分離に向けて改革をリードしていく。
JERAは2015年4月30日に東京電力と中部電力が折半出資で設立して、両社の火力発電事業の新規開発業務から開始する。その後は3つのステップに分けて段階的に火力発電事業を新会社へ移行していく(図2)。特に注目は第3ステップで、合計26カ所にのぼる既存の火力発電所も新会社に統合する見通しだ。
ただし現時点では既存の火力発電所を新会社に統合することは決まっておらず、2年後の2017年春をめどに判断する。その1年前には2つの重要な動きがある。1つは2016年4月に始まる電力小売の全面自由化で、同時に電力会社の事業を発電・送配電・小売の3つに区分して規制を緩和することが決まっている。
もう1つの動きは東京電力が2016年4月に実施する組織改革だ。火力発電・送配電・小売の3つの事業をそれぞれ分社化する予定になっている(図3)。火力発電の事業会社は既存の発電所の運営を効率化してコスト競争力を高める必要がある。その成果をもとに1年後の2017年春になれば、中部電力の火力発電事業と合わせてJERAに統合する効果を判断できる。
両社の火力発電所の出力を合計すると6700万kW(キロワット)に達する。電力会社10社の発電所の総出力は原子力や水力を含めて2億kW程度で、そのうちの3割以上を東京電力と中部電力の火力発電所が占める。燃料の調達から発電までを1つの会社で一貫して実施する体制を構築することができれば、コスト競争力の高い発電事業者になることは確実だ(図4)。
今後は中部電力も発送電分離に向けて事業の分割を進めていく必要がある。既存の火力発電所の運営だけを担当する事業会社の存在意義を考えると、発送電分離までにJERAに統合する可能性は大きい。
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