ダムの放流水を発電に活用、年間370世帯分の電力に:自然エネルギー
中部電力グループのシーテック(名古屋市瑞穂区)が、2015年10月から建設工事を進めていた「秋神水力発電所」(岐阜県高山市)が完成し、このほどに営業運転を開始した。約50メートルの落差を利用して、370世帯分の電力を発電する見込みだ。
このほど発電を開始した「秋神水力発電所」(岐阜県高山市)は、中部電力が所有する秋神ダムの右岸直下に新設したもので、ダムから放流する維持流量を有効活用して発電する(図1)。同社グループ会社のシーテックが建設した。
発電出力は290kW(キロワット)、有効落差は50.33メートルで、最大使用水量は毎秒0.73立方メートル。年間発電量は一般家庭約370世帯分の年間使用電力量に相当する約133万kWh(キロワット時)を想定している。CO2削減量は年間660トンに相当するという。
同発電所はシーテックが自社開発する初の水力発電所であり、水車には独オズバーガー社製のクロスフロー水車を採用している。クロスフロー水車は水の圧力と速度をランナと呼ばれる羽根車に作用させる構造の水車。クロスフローとは水がランナを交差して流れることを意味しており、主に1000kW以下の小水力発電所で採用される。
クロスフロー水車は水中の土砂や流木などに対して耐久性があり、流量変化に追随して調整できるため、流れ込み式水力発電所に適している。さらに、低負荷から最大負荷まで安定した運転が可能で、過酷な条件下でも信頼性が高いという。
また、同社製クロスフロー水車は溶接加工されており、標準化された部品の組み合わせによる構成のため、様々な設計要件に対応できるとともに、低コストで短納期の生産を可能にしている。
水力発電は再生可能エネルギーの中でも安定した発電電力量を期待できることから、今後も中部電力グループ一体となって、一般水力や維持流量発電の開発に取り組む方針だ。
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