電源構成や電力比較サイトの独立性など、消費者から見た情報提供のあり方:動き出す電力システム改革(61)(2/2 ページ)
内閣府の消費者委員会が「電力小売自由化について注視すべき論点」を公表した。電源構成を含めて消費者にわかりやすい情報提供を事業者に促す一方、電気料金の比較サイトの独立性にも言及した。電力会社には契約変更に必要なスマートメーターの早期配備を求めている。
2020年以降の規制料金の撤廃も懸念
消費者委員会が指摘した2点目は「電力比較サイト」による情報提供の公正性・中立性である。比較サイトを利用すると複数の事業者の料金プランを検討できるが、公正で中立な情報提供が前提になる。サイトの運営者が小売電気事業者から独立であることを明確に示す必要があると指摘した。運営者に共通の倫理基準や公正性・中立性を認証する公的な仕組みについても検討すべきだと主張している。
さらにサイト上で実行できる電気料金のシミュレーション結果にも注意を促す。料金計算の条件や計算方法によって結果に違いが生じるため、その点を消費者が理解できるような情報提供をサイトの運営者に求めた。
小売営業ガイドラインでは、消費者の誤解を招くような情報が比較サイトなどで提供された場合に、速やかに訂正を働きかけることを望ましい行為と位置づけている(図3)。そうした状態を不当に放置すると「問題となる行為」とみなされて、業務改善命令を受けるなど罰則の対象になる。
小売自由化が始まって1カ月以上が経過しても、実際に契約を変更した消費者の割合は1%程度にとどまっている。消費者委員会は注視すべき3点目に「スイッチング」(契約変更)に円滑に対応する必要性を挙げた。
スイッチングには消費者ごとにスマートメーターの設置が不可欠なため、電力会社に対して早急な配備を求めている。ただし現実には東京電力の管内でスマートメーターの設置に大幅な遅れが発生してスイッチングに支障が生じている。
このほか4点目として消費者からの相談に対応する体制整備、5点目に小売自由化の認知度向上を事業者と関係省庁に訴えた。6点目は2020年に実施する予定の規制料金の撤廃に関する指摘だ。政府が進める電力システム改革では、2020年4月の「発送電分離(送配電部門の法的分離)」を実施した後の早い時期に規制料金を撤廃することになっている(図4)。
電力会社の小売部門に義務づけられている規制料金がなくなると、電力の使用量が少ない低所得者層の負担が増える可能性を消費者委員会は懸念する。この点から規制料金の撤廃後も、現在の3段料金制で第1段階の料金が低く設定されている効果をもとに、何らかの対応が必要になることを課題に挙げた。
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