東京電力のシステムに不具合、またも小売自由化に支障をきたす:電力供給サービス(2/2 ページ)
電力・ガス市場を監視する国の委員会は東京電力の託送業務システムに不具合が発生していることを公表した。小売電気事業者が料金を計算するために必要な使用量の通知に遅れを生じている。委員会と資源エネルギー庁は東京電力に対して不具合の原因と今後の対応策について報告を求めた。
不安視されていた東京電力のシステム開発
実は東京電力の託送業務システムに関しては以前から不安の目が向けられていた。政府が小売全面自由化に先だって進捗状況を確認する委員会を2月9日に開催したが、その中で電力会社10社のうち東京電力だけが託送業務システムの開発状況について説明を求められている(図5)。
この時点では「開発工程に大きな遅延はなく、(最終段階の)テスト・データ移行工程を実施中」と説明していた。さらにシステムにトラブルが発生した時の暫定対応策や体制整備を進めて、実際の運用手順についても確認中の状態にあった。トラブル時の運用手順では託送料を人手で計算して、概算レベルで小売電気事業者に請求する手順になっている(図6)。
東京電力パワーグリッドは2020年の発送電分離(送配電部門の法的分離)に向けて、他の電力会社に先行して2016年4月1日に分離・発足した(図7)。自由化が進んでも地域の送配電事業を独占的に運営する役割を担い、小売電気事業者に対して公平な立場で送配電ネットワークを提供することが求められている。
ところが発足の前から重大な問題を引き起こしている。家庭や商店などの需要家が東京電力から他の小売電気事業者へ契約を切り替えるためには、スマートメーターを設置する必要がある。しかし東京電力は大量のスマートメーターの設置工事を的確に準備することができずに、現在も最大で2カ月に及ぶ遅延を生じている。
スマートメーターの設置が遅れると小売電気事業者は正確な電気料金を計算できないうえに、30分ごとの電力の使用量に基づく節電支援サービスなども提供できない。小売全面自由化に与える影響は大きく、この問題でも東京電力と東京電力パワーグリッドは3月から4月にかけて資源エネルギー庁から3度に及ぶ報告徴収の要請を受けている。
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