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原子とロールで作る「ペロブスカイト太陽電池」太陽光(3/4 ページ)

急速に変換効率を伸ばしているペロブスカイト太陽電池。安価な材料を用いた薄膜太陽電池として期待されている。オランダSollianceは、量産に欠かせない太陽電池のモジュール化技術を開発。変換効率を維持しながら、モジュール面積を拡大した。開発ポイントは製造プロセスにあった。

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3段階で量産性を改善

 Sollianceは、モジュール化技術を徐々に磨いてきた。2014年7月、今回よりも2つ手前の段階では面積16cm2のモジュールを試作した(図3)*7)

 次にモジュールの開口部面積を156cm2に拡大。製造プロセスではブレード塗工プロセスと、メカニカルパターニング技術を用いた。セル数は24、変換効率は10%だった。

*7) 開口部の変換効率は11.3%であり、Sollianceの文献調査によれば、当時のペロブスカイト太陽電池モジュールの中で最も変換効率が高かったという。


図3 第一世代のペロブスカイト太陽電池モジュール 出典:Solliance

量産可能な15%モジュールも見えてきた

 今回のペロブスカイト太陽電池モジュールでは、工業規模にスケールアップ可能なダイ塗布法で基板上に薄膜を作り上げた。セル形成後、積層プロセスを用いたフレキシブルバリアを形成、モジュールをパッケージ化した。

 156cm2モジュールと比較すると、今回の改善点が2つあることが分かる。第一にモジュール面積を実用レベルまで引き上げながら効率を維持し、第二に、パターニング技術と薄膜の塗工プロセスをより量産性が高い手法に置き換えたことだ。今回の製造プロセスでは、電極形成を除き、常圧下において120℃以下で全ての製造プロセスを進めることができたという。

 冒頭でロールツーロール方式やシートツーシート方式を適用しやすいとしたのは、このように製造技術が優れているからだ。圧力、温度といった製造環境はもちろん、優れた成膜技術や相互接続技術を利用することで容易にロールツーロール方式などを適用できるという。

 Andriessen氏は発表資料の中で、今回の成果を次のようにまとめた。「スケールアップを果たした変換効率10%のペロブスカイト太陽電池モジュールは、最初の重要な開発ステップに到達したといえるだろう。今後、スケールアップしたペロブスカイト太陽電池モジュールの変換効率を、短期間で15%超にまで高めることができると確信している。それもごくコストの低い材料と製造プロセスを用いてだ」。

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