高速走行「電気バス」、無線充電の効率86%:電気自動車(3/3 ページ)
高速道路を走行する中型EVバスの実証走行を東芝が開始した。特徴は無線充電(ワイヤレス充電)を採用したこと。15分で充電を終え、1日当たり3回、川崎市と羽田空港を結ぶ。
高速走行できる工夫は2つ
今回のEVバスの基となった車体は、日野自動車から調達したデーゼルバス。調達後、パワートレインを東芝が電動化した。東芝が開発済みのリチウムイオン蓄電池「SCiB」と新開発のモーター駆動システムを用いる。
EVバスの全長は8.9m。幅2.3m、高さ3.0m、車体重量8220kg(定員45人)。この車体を最高速度時速94km(車両性能試験結果)で動かす。ワイヤレス充電対応のEVバスとして日本で初めて高速道路を走行するためだ。
このような高速走行を実現するためには、大電流を利用できなればならない。いいかえれば、蓄電池側とモーター側、それぞれに高い出力が必要だ。
「当社のSCiBはもともと出力(パワー)を高くとることができる特性があり、これを生かした。新規に開発は行わず、既存のSCiBを組み込んだ。新たに開発したのはモーターだ。SCiB電池システムの出力電圧において高いトルクを生むよう、改善を加えた」(東芝)*5)。
*5) SCiBは急速充電を用いた場合でも充放電回数が1万5000回と、通常のリチウムイオン蓄電池よりも1桁ほど多い。このため、観光地や空港などの巡回バスに適するという。実証走行と似た使い方である。
川崎市やANAの協力を得て実施
今回の実証走行は、2014年3月に開始した環境省の委託事業である「平成26年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一貫。3年間の実証事業であり、3年目の集大成という位置付けだ*6)。
実証走行では川崎市と全日本空輸(ANA)の協力を得て、充電システムを設置する用地などを確保した。EVバスに乗車する利用者は、ANAとANAグループの従業員だ。
ワイヤレス充電システムを設置したのは、「キングスカイフロント」地区として国家戦略総合特区に指定された川崎市川崎区殿町(とのまち)(図4、図5)。EVバスを充電後、羽田空港第二ターミナルビル北側に位置するANAの拠点まで往復走行する。
*6) 事業開始に当たって環境省は次のように概要を説明していた。「乗用車PHEV(プラグインハイブリッド自動車)/EV(電気自動車)向けワイヤレス充電において国際標準化を見込む周波数を用いて、EVバスと乗用車EVで共用可能なワイヤレス充電地上設備を含めたシステムを開発し、企業用連絡EVバスの運行等による実証を行う」。乗用車を用いた実証は行っていない。
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