停電しても最寄駅まで走れる、銀座線に東芝製の蓄電池を搭載:蓄電・発電機器
一般的な鉄道車両は架線から得た電力で走行する。では、もし災害時などに電力が遮断された場合はどうすればよいのかーー。こうした非常時に有効な東芝製の非常用電源装置を東京メトロの銀座線1000系が採用した。停電しても最寄り駅まで乗客を運ぶ電力を賄えるという。
東芝は2016年6月14日、東京地下鉄(東京メトロ)の銀座線1000系車両向けに、リチウムイオン二次電池と充放電制御装置を組み合わせた非常走行用電源装置を納入したと発表した(図1)。搭載車両は既に同年4月から営業運転を開始している。
今回納入したのは40編成分の非常走行用電源装置。リチウムイオン二次電池には東芝が2007年から展開している「SCiB」を採用した。負極材料にチタン酸リチウム(LTO)を用い、外力などで内部短絡が生じても熱暴走を起こしにくいのが特徴の製品である(関連記事)。
SCiBは耐低温特性も備えており、真冬の氷点下であっても性能を維持できる。こうした性能や耐久性が非常走行用電源装置に要求される品質に適していると評価され、受注につながったという。
非常走行用電源装置の機能は以下の通り。平常時は架線から得た電力をSCiBに蓄電しておく。この電力を停電など非常時に電力が遮断された際に、車両の主回路へ供給する。これにより停電が発生した場合でも、乗客を最寄り駅まで送り届けるのに必要な電力を賄うことができる(図2)。
東芝の非常走行用電源装置が営業車両に搭載されるのは、今回が初となる。なお同社は2014年に銀座線1000系の3次車に、全閉式永久磁石同期電動機(全閉PMSM)と、SiCダイオードを採用したVVVFインバーター装置を組み合わせた駆動システムを納入している。こちらは省エネに貢献するもので、旧型の01系と比較してシステム全体の消費電力量を約37%削減したという(関連記事)。
東芝は今後も鉄道車両用システムの国内外での展開に注力していく計画だ。また、系統用蓄電池システム、アイドリングストップシステム、EVバスシステムなどのさまざまな用途で展開しているSCiBの拡販も推進していくとしている。
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