ブロッコリーを栽培しながら太陽光発電、新潟・佐渡島で営農型の実証開始:スマートアグリ(2/2 ページ)
新潟県の佐渡島で耕作地を利用した営農型の太陽光発電が始まった。農地を最大限に活用して収入を増やすモデル事業として土地の所有者が運営する。高さ2メートルの架台に薄膜の太陽電池パネルを設置した。年間に3世帯分の電力を供給しながら、パネルの下でブロッコリーなどの栽培に取り組む。
石油火力に依存する離島に太陽光発電
東京大学とソーラーフロンティアは同じ佐渡島にある旧・小学校の校舎を利用した太陽光発電プロジェクトにも2014年から取り組んでいる。地元の酒造メーカーが佐渡市から校舎を借り受けて、再生可能エネルギーによる電力を活用して酒を製造する「学校蔵プロジェクト」である(図3)。
閉鎖後の校舎を酒蔵に利用する一方、敷地内にある旧・水泳プールに太陽電池パネルを設置して電力の自給自足を可能にした。発電能力は営農型のプロジェクトと同様に10kWで、酒の製造に必要な電力の20%をまかなうことができる。2015年11月から「学校蔵」のブランド名で酒の販売も開始した。
離島の佐渡島では主力の電源が東北電力の運転する石油火力発電所である。重油を燃料に利用したディーゼル発電設備が島内の2カ所で稼働している。石油火力発電は燃料の輸入価格が石炭や天然ガスよりも高く、CO2(二酸化炭素)の排出量も天然ガスによる火力発電と比べて多い。
自然環境に恵まれた島の未来に向けて、発電コストとCO2排出量の両方を抑制できる再生可能エネルギーの拡大が急務だ。日本海に浮かぶ佐渡島は風況が良好なほか、南部では日射量も比較的多い(図4)。営農型の太陽光発電を実施する北端の鷲崎地区でも、年間を通じて日射量を十分に確保できる。
島のほぼ真ん中に位置する佐渡市の中心部では、年間の平均日射量が東京の都心部を上回っている。日射量が全国でトップクラスの宮崎市と比べても90%程度の日射量を期待できる(図5)。
営農型のプロジェクトで採用した薄膜の太陽電池パネルは銅・インジウム・セレンを組み合わせた化合物による半導体で構成した製品で、太陽光が当たってパネルの温度が上昇しても発電量が落ちにくい特性がある。実際の発電量と農作物の収穫量がどの程度になるか、農業関係者の注目が集まる。
関連記事
- 「米と発電の二毛作」が順調に進む、収穫量に影響なく電力を供給
佐賀県の棚田で2015年の春から営農型の太陽光発電を実施中だ。2枚の棚田の上部に合計58枚の太陽光パネルを設置して、稲を育てながら電力を作る「二毛作」の実証プロジェクトである。1年目の結果は米の収穫量に影響が出ることはなく、発電量も想定どおりに推移している。 - 「大豆と電力」を生むメガソーラー、シカの放牧地が営農型発電設備に
群馬県沼田市に「沼田市利根町太陽光発電所」が完成した。従来シカの放牧に利用していた非耕作地に建設した発電所で、発電と農業を両立させるソーラーシェアリングを採用。発電を行いながらパネルの下で大豆を育てる。 - ブルーベリー畑で太陽光発電、年間に45万円の収入を生む
静岡県の高原地帯にあるブルーベリー畑で営農型の太陽光発電が始まった。ブルーベリーの生育に影響を及ぼさないように、細長い太陽光パネルを2.5メートル以上の高さに設置した。合計108枚の太陽光パネルで年間に1万3000kWhの電力を作ることができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.