電気料金の燃料費調整額が低下、過去1年間に標準家庭で月額735円も:電力供給サービス
原油やLNGの輸入価格が下落して、為替レートも円高・ドル安に動いたため、電気料金に上乗せする燃料費調整額が大幅に下がっている。全国10地域の電力会社の平均で1年間に1kWhあたり2.45円も安くなった。標準的な家庭で月額735円の値下げに相当する。当面は下がり続ける見通しだ。
電力会社が2016年7月分の電気料金に上乗せする「燃料費調整単価」は、3カ月前の4月分と比べて平均で1円近く低下している(図1)。特に下落幅が大きいのはLNG(液化天然ガス)の比率が高い東京電力で、3カ月間に1kWh(キロワット時)あたり1.48円も下がった。過去1年間では4.1円の値下げである。
標準的な家庭の使用量を月間300kWhとして電気料金を計算すると、東京電力の管内では燃料費調整額だけで月額1230円も安くなる。全国平均でも過去1年間に2.45円/kWh下がり、標準家庭の値下げ幅は月額735円に相当する。
その一方では固定価格買取制度に伴う「賦課金」が2015年度から2016年度にかけて、全国一律に0.67円/kWh(1.58円→2.25円)上昇した。再生可能エネルギーを利用した発電設備が全国各地で拡大して、電力会社などが買い取る電力量が増えたためだ。とはいえ燃料費調整単価の下落分(2.45円)と比較すれば3割以下に収まる。火力から再生可能エネルギーへ電源構成がシフトした効果は電気料金を引き下げる方向にも働いている。
毎月の電気料金は契約電力の大きさで決まる「基本料金」をベースに、月間の使用量による「電力量料金」を加算する。さらに燃料費調整額と再生可能エネルギー賦課金を上乗せする仕組みだ(図2)。この計算方法は電力会社以外の小売電気事業者でも共通で、燃料費調整単価は地域の電力会社と同じ金額を適用する。
燃料費調整単価は火力発電に利用する原油・LNG・石炭の輸入価格をもとに、各電力会社が料金を改定した時の平均燃料価格と比較して算定する決まりだ。ただし3〜5カ月前の輸入価格で計算するため、実際の電気料金に反映するまでにタイムラグが生じる。直近の7月分の燃料費調整単価は2月〜4月の輸入価格を反映している。
2014年度と2015年度の原油・LNGの輸入価格を見ると、ほぼ一貫して下落傾向が続いている(図3)。原油は1バーレルあたり110ドルから2年間で30ドル前後まで下がった。LNGも100円前後から50円以下へ半値になった。もともと価格が安い石炭はさほど値下がりしていない。
加えて円ベースの輸入価格に影響する為替レートの変動が激しい。2016年6月現在の水準は2年前とさほど変わらない1ドル100円前後だが、2015年度後半の1ドル120円台の時と比べると15%以上のドル安になっている。燃料の輸入価格が3〜5か月のタイムラグで電気料金に反映されるため、最近のドル安は燃料費調整単価の低下につながる。
当面は原油・LNGの輸入価格が上昇する見込みは薄く、為替レートもドル安が続く見通しだ。2016年度の後半に向けても、燃料費調整単価は下がる可能性が大きい。節電効果を加えれば、家庭や企業の電気料金の負担は軽くなっていく。
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