電気料金の誤請求が1646件にも、東京電力のシステム不具合で:電力供給サービス(2/2 ページ)
5月中旬に明らかになった東京電力の「託送業務システム」の不具合がますます市場を混乱させる状況を招いている。旧式の電力量計と新型のスマートメーターで異なる電力使用量の算定方法を混同した結果、1646件にのぼる需要家の使用量データを不正確なまま小売電気事業者に送っていた。
市場の混乱は9月以降も続く見通し
東京電力パワーグリッドの託送業務システムの不具合によって発生しているさまざまな問題は9月以降にならないと解決できない可能性が大きい。というのも、電気料金の誤請求を招いた要因の1つはスマートメーターの設置工事が遅延しているためで、遅延を解消できるのは9月の見込みだからだ。
その間に託送業務システムの不具合を修正したうえで、スマートメーターの設置工事に遅延が生じなくなって初めて、適正な状態で毎月の電力使用量のデータを算出して小売電気事業者に通知できるようになる。現在のところ託送業務システムには4種類の不具合が発生していて、解消のめどはまもなく明らかになる予定だ(図3)。
東京電力パワーグリッドは電力・ガス取引監視等委員会から、7月1日までにシステムの改善計画を提出するように求められている。改善計画の中で具体的な対応策と実施スケジュールを提示して、全面的に問題点を解消できる時期の見通しも示す必要がある。
託送業務システムの不具合は電力使用量のデータを誤って算出した問題だけではなく、小売電気事業者に通知する使用量のデータを期日までに送信できない問題も起こっている。そのために小売電気事業者は一部の需要家に対して電気料金を円滑に請求することができていない。
こうした電力使用量のデータを通知できていない件数は6月16日の時点で2万件以上にのぼっている(図4)。そのうち半分弱は東京電力エナジーパートナーが新規で獲得した需要家のデータで、残る半分強は小売電気事業者が契約を結んだ需要家のデータである。託送業務システムの不具合が解消されるまでの間は、電力使用量データの未通知も続く可能性がある。
実際のところ東京電力パワーグリッドのシステム開発・運用には不安な面がある。新たに発生した電力使用量データの誤りは、不具合を解消するために追加した処理機能に間違いがあったことによる。処理の手順が正しく作られていなかったことが原因で、旧式のメーターと新型のスマートメーターの検針期間を正確に計算できなかった。
政府の委員会に提出する改善計画をもとに、改めてプロジェクト管理を徹底して、システムの修正計画を着実に実行していく姿勢が東京電力パワーグリッドには求められる。その一方で小売電気事業者や需要家に対する補償なども検討する必要がありそうだ。国を挙げて自由化に動き出した電力市場を混乱させた責任は重い。
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