エネルギー自給率40%超へ、営農型の太陽光発電にも挑む:エネルギー列島2016年版(10)群馬(3/3 ページ)
群馬県では再生可能エネルギーを大幅に増やして、電力の自給率を2030年に40%以上へ高める計画を推進中だ。農地で営農型の太陽光発電が始まり、山間部では豊富な水量を生かせる中小水力発電が活発に進んでいる。森林の間伐材を利用した木質バイオマス発電も地域の安定した電力源になる。
木質バイオマスの電力を東京にも送る
群馬県では太陽光・中小水力・バイオマスの3種類の再生可能エネルギーによる発電設備が拡大中だ。これまでに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は260万kWを超えている(図11)。このうち約3分の1が運転を開始して、すでに28万世帯分の電力を供給できる状態になった。
バイオマス発電では2011年に運転を開始した「吾妻木質バイオマス発電所」の規模が大きい(図12)。地域の森林で発生する間伐材のほか、街路樹の剪定枝や建築物の廃材などをチップに加工して燃料に利用する。発電能力は13.6MWで、年間に1億1000万kWhの電力を供給できる。一般家庭で3万世帯分の電力に相当する。
県内の他の地域でも木質バイオマス発電所を新設するプロジェクトが始まっている。北部の川場村(かわばむら)にある森林コンビナートの構内で、2017年1月に運転を開始する予定だ。燃料の木質バイオマスは地域の森林から間伐材を調達するほか、製材所から出る端材も活用する。当初の発電能力は40kWである。
川場村は面積の88%を森林が占めていて、主な産業は農業である。豊富にある森林資源を生かして地域を活性化する「グリーンバリュープログラム」に、2012年度から官民一体で取り組んでいる。木質バイオマス発電の規模を拡大しながら、発電時の排熱を野菜の温室栽培にも利用する計画だ(図13)。
さらに発電した電力を150キロメートル離れた東京都の世田谷区に供給する。川場村と世田谷区は35年前から協力関係を結んで人材交流などを進めてきた。再生可能エネルギーの利用拡大に取り組む世田谷区に木質バイオマス発電所の電力を供給することで、2つの地域が連携してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減していく。
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