原発が立地する町にメガソーラー、売電収益を復興計画に生かす:太陽光(2/2 ページ)
東日本大震災による原発事故により、町民の避難生活が続いている福島県の大熊町。同町では復興計画の一環としてメガソーラーの誘致を進めている。このほど新たに出力約11.7MWの発電所の建設が決まった。売電収益の一部は復興事業費として活用される。再生可能エネルギーの導入拡大とともに、復興計画を推し進めるプロジェクトが着々と進んでいる。
売電収益を復興に生かす、同地区で2カ所目の発電所に
大熊エネルギー・メガソーラー発電所は福島県の「福島県再エネ復興支援事業」による補助金を活用して建設した。これは発電事業の収益の一部を復興支援事業に活用することを目的に、避難解除区域などに再生可能エネルギーによる発電設備の導入する際の費用を支援するものである。発電所の完成後は、収益の一部が福島県再生可能エネルギー復興推進協議会を通じて、避難解除区域などの12市町村における復興支援事業費として活用される。
大河原地区に復興支援に活用するメガソーラーが建設されるのは、これが2カ所目になる。1カ所目は福島発電が運営する「大熊町ふるさと再興メガソーラー発電所」で、既に2015年12月から稼働を開始している(図3)。
大熊町ふるさと再興メガソーラー発電所は約3.2ヘクタールの農地を転用して開発した。約7700枚の太陽光パネルを設置し、出力は1.89MW、年間約2200MWhの発電量を見込んでいる。一般家庭約600世帯分の使用量に相当する発電量だ。事業期間は20年間を想定しており、その後は農地に戻す計画である。
同発電所の売電収益の一部は大熊町が大川原地区に建設予定の植物工場の運営費として活用される。福島県は2040年までに再生可能エネルギーの使用率100%という目標を掲げている。こうした福島県の目標達成に貢献すると同時に、地域の復興計画も推し進めるプロジェクトが着々と進んでいる。
関連記事
- 太陽光発電で被災地が生まれ変わる、洋上風力や地熱発電も復興を後押し
東日本大震災から5年が経過して、福島県の被災地では復興に向けたメガソーラーが相次いで運転を開始した。太陽光発電の規模は全国でトップになり、県内のエネルギー自給率は30%に迫る。洋上には浮体式による風力発電プロジェクトが拡大中で、温泉地では地熱発電も始まった。 - 太陽光発電で全国1位に躍進、被災地に新たなエネルギーの芽生え
震災からの復興を推進する福島県で太陽光発電が急速に拡大している。沿岸部から山間部まで広大な土地にメガソーラーが続々と誕生して、災害に強い分散型の電力供給体制の整備が進んできた。農業と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングの取り組みも広がり始める。 - 東北最大の地熱資源を生かせるか、福島県の温泉跡地で掘削調査へ
山形・福島・新潟の東北3県にまたがる磐梯地域は、東北最大級の地熱資源があると推定されている。現在、福島地熱プロジェクトチームが「磐梯朝日国立公園」で資源量の調査を進めている。2016年度からは、これまでの調査結果を踏まえ、有望な開発地域として特定した磐梯山東部のエリアで実際に掘削調査を実施する計画だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.