川崎火力の設備更新が終了、総出力342万kWで世界最新鋭のLNG火力へ:蓄電・発電機器
17年間の工期を経て、東京電力の川崎火力発電所の設備更新工事がついに終了した。全6軸のうち最後に更新作業を終えた2号系列第3軸には最新のガスタービンを導入し、発電効率を約61%に高めた。全6軸の合計出力は342万kWで、世界最新鋭のLNG火力として新たなスタートを切った。
東京電力の燃料・火力発電事業を担当する東京電力フュエル&パワーはこのほど、川崎火力発電所の2号系列第3軸(定格出力71.0万キロワット)の営業運転を開始した(図1)。同軸の建設は、排熱回収ボイラーの工場組み立て範囲の見直しによる外段取りを増やすなど、工期短縮を進める工夫を行った。その結果、2011年の東日本大震災後に策定した計画から約1年前倒しで運転開始を実現している。東京電力は今回の設備更新により、約100億円のLNG燃料費と約70万トンのCO2排出量を削減したと試算している。
同軸には、世界最高水準の発電効率であるMACCIIを採用。ガスタービンに最新の耐熱材料と冷却技術を導入し、燃焼温度をMACCの1500度から1600度へ上昇させたことなどにより、世界最高水準の約61%という高い発電効率を実現する。これにより、従来型のLNG火力と比較して約4割発電効率が向上し、燃料使用量およびCO2排出量を約30%抑制する。
環境に配慮した排ガス処理技術も導入した。燃焼温度高温化に対応した低NOX(窒素酸化物)燃焼器および高性能脱硝装置など、環境に十分に配慮した最新の排ガス処理技術を採用している。
川崎火力発電所の敷地面積約28万平方メートル。1961年に石炭火力発電所として営業運転を開始。その後公害問題に対処するため、1972年にナフサ、1984年にLNGへ燃料を転換している。1996年にはリプレース計画を公表し、1999年から着手。既存設備の解体と並行して最新鋭LNG火力発電所の建設工事を開始した。設備更新を終えたことで、1500度級コンバインドサイクル(MACC)4軸、1600度級コンバインドサイクル(MACCII)2軸を持つ総出力342万kWの世界最新鋭のLNG火力発電所として新たなスタートを切った。
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