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硫黄で作る革新リチウム電池、安定した充放電サイクルを達成蓄電・発電機器(2/2 ページ)

次世代電池の1つとして期待されている「リチウム硫黄電池」。実用化に向けては、正極の放電反応により生成される多硫化物による性能の低下が課題となっている。産総研の周豪慎氏らの研究グループは、電池のセパレーターに「イオンふるい」の機能を持つ複合金属有機構造体膜を用い、安定した充放電サイクル特性を持つリチウム硫黄電池の開発に成功した。

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1500回の充放電後も安定動作

 金属有機構造体が「分子ふるい」の効果を示すのは、サブナノメートル〜数ナノメートルの範囲でサイズが一定の3次元的なミクロ孔を持つことに起因する。今回研究グループは、多硫化イオンは通り抜けられないがリチウムイオンは通り抜けるサイズのミクロ孔を持つ金属有機構造体をセパレーターの材料に選択した。

 金属有機構造体は結晶であり、割れやすい。そこで強度を保つために酸化グラフェン層に混合して柔軟性を持たせた複合金属有機構造体膜を合成した。これをリチウム硫黄電池のセパレーターとして用いたところ、電池の性能低下につながる多硫化物イオンの酸化還元反応を抑えることに成功した。

 具体的には複合金属有機構造体膜をセパレーターとしたリチウム硫黄電池を、電流密度1673mA/g(ミリアンペア/グラム)、室温で1500回の充放電を繰り返したところ、初期活性化するための約100回を除き、100〜1500回までの放電容量の劣化がほぼなかったことを確認した。1500回目の充放電を終えても、放電容量も900mAh/gを維持でき、良好なサイクル特性を示したとしている(図2)。研究グループでは今後、複合金属有機構造体膜をセパレーターとして利用し、実用化に向け優れた性能のリチウム硫黄電池の開発を目指す方針だ。


図2 今回の実験におけるリチウム硫黄電池の放電容量と、電池における放電容量と充電容量の比であるクローン効率を示したグラフ 出典:産業技術総合研究所
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