沖縄に自噴する天然ガスで発電、リゾートホテルに電力と温水を供給:電力供給サービス(2/2 ページ)
沖縄県の那覇市にあるリゾートホテルで、地下から噴出する水溶性の天然ガスを利用して電力と温水の供給事業が始まった。従来と比べてホテル内のエネルギー消費量を3割以上も削減できる見込みだ。石油の依存度が高い沖縄でエネルギーを地産地消するメリットは大きい。
沖縄本島の中南部と宮古島に天然ガスが分布
沖縄では1960年から水溶性の天然ガスの調査が始まり、本島の中南部と宮古島に膨大な量を埋蔵していることが明らかになった。2014年度の時点で宮古島を含めて県内12カ所に天然ガス井が存在する。ロワジールホテルの敷地内にある「ロワジールカス井」も、その中の1つだ(図4)。
ロワジールガス井から噴出する天然ガスは1日あたり668立方メートルにのぼる。主成分はメタンガスで、温泉に含まれるメタンガスが大気中に放散すると温室効果ガスになる。この問題を解消するために沖縄県と共同で2002年からガス発電プラントの実証研究に取り組んできた。
新たに経済産業省の「平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金」の交付を受けて、水溶性天然ガスを利用できるコージェネレーションシステムの導入計画に着手した。沖縄ガスが設備を運営して電力と温水をホテルに供給する一方、オリックスが設備を所有してリース契約で提供する体制だ(図5)。
沖縄県のリゾートホテルでは本島の南東部に位置する南城市の「ユインチホテル南城」でも、水溶性の天然ガスを利用したガスコージェネレーションの導入プロジェクトを2014年から進めている。敷地内に掘削したガス井から天然ガスを抽出して電力と温水をホテルに供給する予定だ(図6)。
さらに南城市が内閣府の支援を受けて、ホテルを中核に「南城市ウェルネス・スマートリゾート・ゾーン」を展開する構想もある。天然ガスから作った電力と温水をホテル周辺の医療・介護施設にも供給するほか、コージェネレーションシステムで発生するCO2を回収して農作物の栽培に利用する(図7)。2023年までの長期計画で新たな地域産業の育成に取り組んでいく。
関連記事
- 温泉の天然ガスでコージェネ、沖縄本島で進む「スマートリゾート計画」
沖縄県の南城市で、温泉から生まれる水溶性の天然ガスを利用した「スマートリゾート計画」が動き出した。拠点になるリゾートホテルにコージェネレーションシステムを導入して、電力と熱を地域に供給する計画だ。さらに排出するCO2を農作物の栽培に生かす「トリジェネ」にも挑む。 - 沖縄本島でバイオガス発電、下水から2300世帯分の電力を作ってCO2削減
石油の依存度が大きい沖縄で再生可能エネルギーによるCO2削減の取り組みが進む。本島にある下水処理場のうち2カ所でバイオガス発電設備の建設が始まった。下水の処理で発生する大量のバイオガスから電力を作ることで、CO2排出量を20%削減できる見込みだ。 - 小さな離島で再生可能エネルギー7割へ、台風を避けながら風力発電と太陽光を
火力発電の依存度が高い沖縄県で、小規模な離島の電力源を再生可能エネルギーに転換するプロジェクトが進んでいる。台風を避けられる可倒式の風力発電所を中核に、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて島内の需給バランスを安定させる試みだ。沖縄本島にも大規模なメガソーラーが増えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.