インドネシアの再エネ普及を後押し、発電量46.7GWhの水力発電所を建設:自然エネルギー
再生可能エネルギーの普及進めるインドネシアでは水力発電の設備容量を、現在の約4000MWから2028年には1万5000MWに増強する計画を掲げている。同国で50年以上にわたって水力発電設備の設計監理に携わってきた日本工営は、現地法人を通じて今年の夏から同国のFITを活用した水発電事業に本格的に乗り出す。
電力・公共社会基盤整備などの総合建設コンサルタント事業を展開する日本工営(東京都千代田区)のインドネシア現地法人が、このほどジャワ島で水力発電施設の建設に着手した。
西ジャワ州チカエンガン川で小水力発電の開発権を持つインドネシア現地法人の Cikaengan Tirta Energi(以下、チカエンガン社)は、インドネシアの国有電力会社であるPLNと売電契約を2016年5月に締結。これに合わせてチカエンガン社は水力発電施設の建設を開始するなど、インドネシア版FIT(固定価格買取制度)を適用した売電事業に本格的に乗り出す。
水力発電設備の建設場所はバンドン市の南東約90kmに位置する西ジャワ州ガルット県(図1)。設備容量の合計は約7.2MW(メガワット)で、出力3.59MWの横軸フランシス型水車を2基設置する。発電方式は流込み式で、1秒当たり8.2立方メートルの水量と101.6メートルの有効落差を利用して発電する。設備利用率は74%、年間発電量は46.7GWh(ギガワット時)を見込んでいる。
同事業では、日本工営グループが水力発電施設の施工監理を行うことで事業費節減に努め、水車・発電機など設備の一部についてリースファイナンスを利用することでリスク分散を図る。
同社は中期経営計画で「新事業の創出と拡大」を基本方針の1つとしており、小水力発電だけでなく太陽光発電、地熱発電など長期的な成長が見込める再生可能エネルギー発電事業への投資を検討している。同事業は日本工営グループ第1号の海外水力事業案件となる。将来的には水力IPP(Independent Power Producer)事業のグローバル展開を視野に入れている。
インドネシアでは増大するエネルギー消費に対し、省エネと再生可能エネルギーの利用促進が課題となっている。さまざまな再生可能ネルギーの中でも、特に水力発電の導入ポテンシャルは大きいとされており、普及に期待がかかっている。同国では現在の水力発電容量約4000MWを、2019年に6300MW、2028年には1万5000MWに増強する計画である。
日本工営は50年以上にわたってインドネシア水力発電事業の計画・設計・施工監理を行ってきた。その実績と同国における降水量や河川流量、地質などに関する知見を生かし、引き続きインドネシア国電源開発に貢献してく方針だ。
関連記事
- 小水力発電の3つの課題−水利権、採算性、維持管理−
日本中に流れる川の水を有効に利用すれば、小水力発電の規模を飛躍的に拡大することができる。実際に各地域の自治体が導入プロジェクトを進めているが、期待ほどには設置件数が増えていない。維持管理に手間がかかるほか、天候によって水量が変動して採算性を見込みにくい点が課題だ。 - 世界の発電量の22.8%が再生可能エネルギーに、風力・太陽光・水力が伸びる
2014年も世界各国で再生可能エネルギーの導入が活発に進んだ。火力や原子力を含む全世界の発電量に占める比率は22.8%へ上昇した。発電設備の容量は1年間に17%増えて、特に風力・太陽光・水力の伸びが大きい。国別では中国がトップを走り、日本は水力を除くと第6位に入る。 - 再生可能エネルギーが全世界で22%に、太陽光と風力が伸びる
国際的な再生可能エネルギーの推進団体であるREN21が世界各国の最新の導入状況をまとめた。全世界で稼働中の発電設備のうち再生可能エネルギーの比率が2013年末で22.1%に達した。1年前と比べて0.4ポイントの増加で、特に太陽光と風力の伸びが大きい。日本は太陽光で第4位に入った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.