風力発電の環境アセス期間半減へ、新たに既設と工事中設備の評価を実施:自然エネルギー
NEDOは風力発電施設などを新設する際に、効率的な前倒し環境調査を実現することを目指す新たなテーマに着手した。
風力発電所は導入が大きく拡大しているが、世界に比べると日本の導入率は低いといえる。その大きな課題の1つとなっているのが、環境アセスメント(環境影響調査)の負担である(関連記事)。風力発電所は建設時に環境アセスメントを実施することが法令で定められているが、従来は4年ほど必要となっており、事業環境の変化などを考えると投資が難しい状況となっていた。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ではこの問題を解決するために、風力発電施設などを新設する際に必要な環境アセスメントの手続期間の半減を目指して取り組みを進めている。今回は新たに、これまで実施されていなかった既設および工事中の風力発電所の環境影響実態を検証し、重点的に調査すべき点と効率化できる点を把握する新事業を行う。
従来の取り組みでは、2014年度から環境アセスメントの前倒し調査による早期実証事業を実施していた。今回は、既設および工事中の風力発電所の環境影響を実際に調査し、事前に実施した環境影響評価報告書と比較することで、環境影響の実態を検証するというものである(図1)。
その結果から、環境影響調査として重点的に実施すべきもの、合理化しても環境に影響がないものなどを総括的にとりまとめ、先行実施している環境アセスメント調査早期実施実証事業も含めた事業の成果と組み合わせて知見を公開する。2017年度末頃をめどにガイドとして公表し、風力発電事業者などへ活用を訴えることで、環境アセスメントの質を落とすことなく手続期間の半減を目指すとしている(図2)。
既設サイトおよび工事中サイトにおける新調査事業は、日本気象協会、東洋設計、電力中央研究所、五島育英会東京都市大学、エオネックスに委託予定で事業期間は2016〜2017年度としている。
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