火力・風力・地熱発電の環境アセスメントを迅速化、成長戦略の工程表に盛り込む:法制度・規制
安倍首相が6月5日に発表した成長戦略の中で、エネルギー分野を含む重要政策のロードマップが公表された。高効率火力、再生可能エネルギー、電力システム改革に関する施策を工程表に盛り込み、懸案になっている火力・風力・地熱発電の環境アセスメントを迅速化することも明記した。
成長戦略では戦略市場創造プランとして4つのテーマを掲げていて、その1つが「クリーン・経済的なエネルギー需給の実現」である。具体的には「高効率火力」「再生可能エネルギー」「メタインハイドレート」「電力システム改革」「蓄電池」「パワーエレクトロニクス」の6分野が主な対象になる。
各分野で2030年の目標を示す一方、2015年度までの3か年を中心にした中短期の工程表を明らかにした。特に目を引くのは火力・風力・地熱による発電設備に義務づけている環境アセスメントの迅速化を施策に盛り込んだことだ。
高効率火力の分野では石炭火力とLNG(液化天然ガス)火力の2つに絞って、国際競争力のある発電技術を開発すると同時に、環境アセスメントの期間を現行の3年から最短で1年に短縮する(図1)。2030年の目標には石炭火力で発電効率を55%まで高める「IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)」の実用化を掲げた。
再生可能エネルギーでは風力と地熱の2つに関する施策を工程表に記載した(図2)。現在のところ3〜4年かかる環境アセスメントを半減させて、発電設備の導入拡大を全国で促進する。風力では農地転用制度の取り扱いについても検討する。地熱では発電タービンを高度化する技術の開発を支援して、2030年に世界市場でシェア7割の獲得を目指す。
電力システム改革に関しては、すでに閣議で決定した3段階の法改正を2013〜2015年度に実施することを改めて明記した(図3)。2016年度に小売全面自由化、2018年度〜2020年度に発送電分離を実現させる。並行して東日本−西日本間と北海道−本州間の連系設備を2020年度までに増強して、地域を超えた電力需給体制を強化する計画だ。
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