浮体式の洋上風力発電を2018年に実用化へ、国家予算にも盛り込む:法制度・規制
革新的な科学技術によって経済再生を図る「科学技術イノベーション総合戦略」が内閣府によってまとめられた。第1のテーマに挙がったのは「クリーンエネルギー」で、浮体式の洋上風力発電をはじめ5つの重点分野に関してロードマップを提示した。2014年度の予算にも反映させる。
「科学技術イノベーション総合戦略」は内閣府に設置した総合科学技術会議(議長:安倍内閣総理大臣)がまとめたもので、2030年に向けて取り組むべき科学技術のテーマを5つに絞って方向性と重点的な取り組みを示した。第1のテーマが「クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現」である。
クリーンエネルギーの重点分野は、(1)再生可能エネルギーの供給拡大、(2)高効率かつクリーンな発電・燃焼技術、(3)エネルギー源・資源の多様化、(4)革新的デバイスの開発、(5)革新的構造材料の開発、の5項目がある。このうち(1)〜(3)については、実現する時期を含めて目標を設定した。
(1)の再生可能エネルギーでは、特に浮体式洋上風力発電システムと太陽光発電システムに注力する。浮体式洋上風力は2018年をメドに実用化する目標を掲げ、主にコストの低下に向けた技術開発に取り組む(図1)。合わせて国際標準化の策定を主導して、世界市場における競争力を高める狙いだ。
太陽光発電システムもコストの低下が最重要の課題で、2030年代に1kWhあたりの発電コストを7円未満に抑えることを目標にする(図2)。現在の1kWhあたり30円以上の水準から5分の1程度に低減させて、長期的な再生可能エネルギーの拡大を図る。この発電コストの目標値はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2009年に策定した太陽光発電のロードマップ「PV2030+」に合わせた。
このほかの再生可能エネルギーでは地熱、波力、海洋温度差などの技術開発も重点分野に挙げている。
(2)の高効率発電に関しては2020年を目標に、燃焼温度が1700度クラスの高温ガスタービン式による火力発電技術を開発するほか、燃焼時に発生する二酸化炭素の分離・回収・貯留技術を実用化する。2020年代にはガスと燃料電池を組み合わせたコンバインドサイクル発電の技術を開発して、さらに発電効率を高める計画である(図3)。
(3)のエネルギー源・資源の多様化ではメタンハイドレートの商業化が最も重要な取り組みになる。2018年をメドに必要な技術を整備したうえで、2020年代の半ばには民間企業が商業化に着手できることを目標にする(図4)。
こうした科学技術のイノベーションを促進するため、2014年度予算の概算要求の段階から、総合科学技術会議が主導する形で政府全体の関係予算を策定する。2013年7月中に各分野の技術開発のロードマップを詳細に示して、2014年度の予算に反映させる方針だ。
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