IoT時代のエネルギー事業、顧客が求めるのは「電気やガス」ではない:電力供給サービス(3/3 ページ)
電力システム改革をはじめとする制度改革に加え、IoT化が進むエネルギー産業。インテルが東京都内で開催したプライベートイベントの基調講演に、東京ガスと東京電力ホールディングスが登壇し今後の両社の事業戦略について語った。
ビジネスモデルの変革を目指す東京ガス
東京ガスはソリューション技術部 スマエネエンジニアリンググループ マネージャーの進士誉夫氏が登壇し「エネルギーシステム改革と新たなビジネスモデルの展開」と題して講演を行った。
進士氏が大きく指摘するのは、今後これまで以上にエネルギーマネジメントの重要性が上がっていくという点だ。今後、電力システム改革による事業者同士の競争激化、さらに原油価格や為替の変動および再生可能エネルギーの導入拡大が影響し、エネルギー価格変動リスクは大きくなる可能性がある。そうなった場合、顧客側のエネルギー価格の変動に応じたエネルギーマネジメントを行いコストを抑えたいというニーズおよび重要性が高まっていくのではなかということだ。
進士氏は「東京ガスはこれまでガス機器の販売を中心に事業を行っていた。しかしエネルギーマネジメントの重要性が高まれば、単にガス機器をたくさん売るだけでは意味が無い可能性がある。導入した後までを見据え、顧客にどういった価値を提供できるかという視点に立ち、ビジネスモデルを転換していかなくてはならないと考えている。さらにその場合、画一的ではなく、個々の顧客に最適なサービスを提供していく必要がある」と述べる。
こうした背景から東京ガスが開発したのが「Optpus」という、エネルギー機器の最適な運転計画の立案を支援するシミュレーションソフトウェアだ。コージェネレーションガスシステムや空調熱源設備などの年間のランニングコストが最小になる運転計画を作成できる。現在は個々の設備ごとに監視を行っているが、将来は統合監視コントロールセンターを開設し、全国各地の機器をまとめて監視・制御し、エネルギーの全体最適化が行えるようなシステムの構築を目指しているという(図3)。
「顧客が求めているのは電気とかガスそのものではなく、それを通じて得られる『快適な暮らし』。われわれは電気やガスの持つ価値を、いかに最大化して顧客に届けられるかを考えていく。今までの130年間続いてきたビジネスモデルを変革するために、大きく舵を切らなくてはならないタイミングだと感じている」(進士氏)
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