競争力の決め手は電源確保と顧客管理、提携戦略も重要:電力自由化で勝者になるための条件(2)(2/2 ページ)
小売事業を検討するにあたって、電源の確保と顧客管理体制の構築をどのように進めるかが最も重要である。他の事業者との連携を含めた需給管理業務の組み立て、長期的な事業展開を見通した販売・サービス面の戦略も事前に準備しておくことが望ましい。
外部委託を長期に続けることは避けるべき
業務を外部に委託する上で判断すべき重要な点は、顧客管理の業務を自社で実施するかどうかである。もう一方の需給管理については、たとえ自社でシステムを導入できても、運用体制を構築できなければ意味がない。当初は外部に委託するか、BGに入るという選択が必要になる。
顧客管理の業務は別である。実際にコールセンターなどの体制を、外部委託を含めて自社のリスクで構築することは簡単ではない。それでも電源を保有しない事業者にとって、既存事業で築き上げた顧客基盤を生かすことが最も重要な戦略になる。顧客管理の体制は自社で構築すべきで、小売事業の戦略を自由自在に変化させていくうえでも必要だ。
さらに需給管理の業務も、当初1カ月程度の立ち上げ支援を受ければ、通常の正常系の業務を立ち上げることは可能である。追加のコストはかかるが、専用のシステムを利用すれば自社で運用できる。あとは需要予測などの経験を積み上げればよい(図2)。
このほかに小売電気事業者のライセンスを取得せずに、取次店や代理店になる参入方式がある(図3)。すでに代理店方式による他業態との販売協力も始まっている。ただしセット割りなどの施策は当初は成果が期待できても、いずれ収益面で厳しくなることが懸念される。
安さを理由に契約を結ぶ需要家は次々とスイッチング(他社へ契約変更)する可能性が大きく、最初に数多くの需要家を獲得できても離脱を防止することは困難である。需要家から「このサービスがあるから選んだ」というようなものを企画・立案できるかが、特に他業態との協業モデルや独立系・ベンチャー系のビジネスモデルには求められる。
顧客管理の面では独自性のあるサービスを展開できるように、戦略変更に迅速に対応できる仕組みが不可欠である。同業他社の仕組みを利用せず、自社で組み立てることが望ましい。もちろん新規参入の事業者には、業務や仕組みを他社に任せるという選択肢はある。その場合でも中長期的にビジネスを展開できると判断できた段階では、自社で業務の体制・仕組みを持つべきであり、そのことが事業継続を後押しするはずだ。
次回は新規参入の事業者にとって不可欠なチャネル戦略とサービス戦略について詳しく解説しよう。
連載第3回:「小売電気事業者のチャネル戦略、対面・訪問・ネット販売も有効」
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