バイオマス燃料になる下水汚泥、乾燥工程をヒートポンプで3割省エネに:省エネ機器
全国で下水処理場で発生する汚泥を肥料や燃料に活用する取り組みが進んでいる。一方で脱水した汚泥を肥料や燃料にするためには、乾燥工程が必要であり、その際に多くのエネルギーを消費する。大川原製作所、関西電力、神奈川県秦野市の3者はヒートポンプ技術でこうした乾燥工程の省エネ・低コスト化を図る実証を開始した。一次エネルギー消費量を約32%、維持管理費を約47%削減する目標だ。
乾燥装置メーカーの大川原製作所と関西電力および神奈川県秦野市の3者による共同研究グループは、国土交通省の「平成28年度下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に「自己熱再生型ヒートポンプ式高効率下水汚泥乾燥技術」を応募し採択を受けている。2016年7月15日から秦野市の「秦野市浄水管理センター」で実証を開始した。
同技術はヒートポンプ技術を応用したシステムを、下水処理に伴って発生する汚泥の処理工程に導入し、脱水汚泥を効率的に乾燥するもの。この研究により、肥料や燃料として汚泥を利用する際の、汚泥乾燥にかかる費用と消費エネルギーおよび環境負荷の低減、ならびに維持管理費の削減効果を実証する。これまで下水処理時に発生する脱水汚泥の乾燥には、大量の熱エネルギーが必要となっていた。
同技術は脱水汚泥の加熱に利用した蒸気ドレン水を、脱水汚泥から乾燥に伴って排出された蒸気を熱源に、ヒートポンプ技術を利用した熱交換器で、再び低圧蒸気にする。その後、この低圧蒸気を圧縮して約160度の高圧蒸気にし、乾燥工程の熱源として循環・再利用する(図1)。1日当たりに処理する汚水量が5000〜5万立方メートルの中小規模下水処理場への適用を想定しており、同規模の従来の汚泥乾燥システムと比較した場合、一次エネルギー消費量を約32%、二酸化炭素(CO2)排出量を約35%、維持管理費を約47%削減することを目標にしている。
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