東京電力が大幅な減収減益に、売上高が18%減る:電力供給サービス(2/2 ページ)
東京電力の分社化後で初めての四半期決算は厳しい内容だ。売上高が前年から2866億円も減り、利益は4割近く落ち込んだ。販売電力量が減少したことに加えて、燃料の輸入価格の低下が売上高と利益の両面に影響した。黒字は確保するものの、今後も減収減益が続く可能性は大きい。
小売事業会社のエナジーパートナーは赤字
原油の輸入価格は前年からドルベースで31%安くなり、LNGは35%安くなっている(図4)。しかも為替レートが1年間に13.3円/ドル下がったため、円ベースの燃料輸入価格はいっそう低下した。
LNGは2016年に入ってからも安くなる一方、原油は中東情勢に対する不安もあり上昇に転じた(図5)。とはいえ原油の需要は世界的に縮小傾向にあり、長期的に上昇を続ける可能性は小さい。LNGとともに輸入価格の低下が続き、電力会社の燃料費は減っていく見通しだ。
燃料の輸入価格が短い期間に変動すると、電力会社の利益に大きなインパクトを与える。電気料金に上乗せする燃料費調整額は3〜5カ月前の輸入価格で算出する決まりになっているからだ。平均4カ月のタイムラグによって、輸入価格が低下する局面では利益を押し上げ、逆に輸入価格が上昇する局面では利益を押し下げる。
急激に輸入価格が低下した2015年と比べると、2016年の低下は小幅になった。その結果、燃料費のタイムラグによる差益は東京電力全体で1250億円も縮小した。大幅な減益をもたらす最大の要因になっている(図6)。こうした状況は2016年度の年間を通じて続きそうだ。他の電力会社でも状況はさほど変わらない。
東京電力ホールディングスは事業会社別の収支も公表した。売上高(外部顧客向け)では小売事業会社の東京電力エナジーパートナーが前年比で2960億円も減少したのに対して、送配電事業会社の東京電力パワーグリッドは137億円の増収になった(図7)。自由化で小売電気事業者が増えたため、送配電ネットワークの接続料が増加したものとみられる。発電事業会社の東京電力フュエル&パワーは89億円の減収だった。
営業損益では持株会社のホールディングスだけが増益で、事業会社は3社とも減益になった。燃料費の影響を受けたフュエル&パワーが944億円の減益で最も大きく、次いでエナジーパートナーが472億円、パワーグリッドも37億円の減益である。エナジーパートナーは200億円を超える赤字の状態だ。2020年4月に実施する発送電分離に向けて、小売事業会社のエナジーパートナーの収益改善が大きな課題になる。
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