電力の小売全面自由化は緩やかに、4月の新規販売量は6万5000世帯分:電力供給サービス(2/2 ページ)
2016年4月の電力需給状況がまとまった。小売全面自由化がスタートした4月の販売量は前年比3.8%の減少ながら、電力会社10社を除く小売電気事業者は20.7%の大幅な伸びを示した。家庭向けの販売量は小売電気事業者49社の合計で1948万kWhになり、一般家庭の6万5000世帯分に相当する。
スイッチング件数は月間50万件を突破
企業や自治体が利用する特別高圧・高圧の契約件数は小売電気事業者が全国で約13万件、電力会社は約72万件になった。契約件数では小売電気事業者のシェアが15%を超えている。これに対して自由化が始まったばかりの低圧では小売電気事業者の契約件数は20万件弱にとどまり、まだ0.2%に過ぎない(図3)。
とはいえ実際に低圧の分野で契約変更(スイッチング)の手続きを完了した件数は4月だけで50万件を超えている。電力・ガス取引監視等委員会がまとめた「電力取引報」の速報によると、電力会社10社から小売電気事業者へ契約を変更した件数は53万7343件に達した(図4)。
このうち東京電力の管内が約35万件、関西電力の管内が約14万件で、両方を合わせると全体の9割を占める。今のところ小売電気事業者の多くは市場規模が大きい東京・関西の顧客獲得に注力している。ほかの地域にも契約変更の動きが広がるまでには、しばらく時間がかかりそうだ。
小売全面自由化で電力会社の販売戦略にも変化が見られる。家庭向けに従来の規制料金メニューに加えて自由料金メニューを販売できるようになり、同じ電力会社の規制料金から自由料金へ契約を変更する件数が急速に増えている。4月だけでも10社の合計で約40万件にのぼる。
特に東京電力の契約変更が多くて、すでに30万件を突破した。小売電気事業者へ契約が切り替わった件数と合わせれば67万件になる。東京電力の管内で低圧の電力を利用している3012万件のうち、2%強が1カ月間に契約を変更した。東京を中心に電力市場の構造は変わり始めている。
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