ついにテスラが太陽光発電メーカーへ、創エネから蓄エネまで一貫提供:太陽光(2/2 ページ)
EVベンチャーであるテスラモーターズは、2016年6月から買収提案を進めていた米国の太陽光発電ベンチャーであるソーラーシティを買収することで合意。従来展開してきた蓄エネだけでなく、ソーラーを自社で扱うことで創エネメーカーとしての顔も持つようになる。
実はこの10年間の動きはマスタープランで計画済み
テスラでは2006年の8月に企業運営の方向性としてマスタープラン(基本計画)を発表。その中で「持続可能な社会」に向けたエネルギー革新企業を目指す方向性が示されている他、ハイエンドとなるEVスポーツカーから投入しその資金で徐々に低価格なEVへと展開を進めていく点などが既に紹介されている。テスラの10年間の取り組みはほぼ、この計画の通り進められてきたといえる。
そして、2016年7月に10年ぶりに更新したマスタープランにおいて、新たに明言したのが、太陽光発電を載せた屋根と蓄電池を組み合わせた家庭向けのエネルギーサービスの提供である。その実現のためには太陽光発電関連企業であるソーラーシティの買収が必要になるという考えである(図4)。
テスラでは、屋根型太陽光発電と蓄電池を円滑に組み合わせた製品を開発し分散型電源として機能させ、1つのスマートフォンアプリで注文やアフターサービスを実施するためには、2つの会社ではなく1つの会社に統合した方がメリットを発揮できるとマスタープランの中で、主張している
ソーラーシティは、イーロン・マスク氏のいとこであるリンドン・ライブ(Lyndon Rive)氏とピーター・ライブ(Peter Rive)氏が2006年に設立した太陽光発電ベンチャーで、マスク氏も会長として経営に参加している。今回の買収は26億ドルでテスラがソーラーシティを買収することで合意。この合意によって、設置コストの削減やハードウェアコストの削減、製造の効率化、顧客獲得コストの削減などにより、テスラとソーラーシティのシナジー効果は1年間で1億5000万ドルに及ぶとしている。またテスラの190店舗の小売りネットワークにより国際的な展開なども可能になるという。
ただし、今回の買収は2016年9月14日までは、他社の買収提案を受けられる条件も入っているとしている。
総合エネルギー企業として進化するテスラ
今回の買収が成立すれば、ソーラーで発電して家庭用の蓄電池およびEVに蓄電するという創エネから蓄エネの動きを1社で完結できる世界でも珍しい企業の1社となる。同社のEVは、ソフトウェアバージョンアップによる機能向上やスマートフォンとの連携などで従来の自動車産業を大きく変えたといわれるが、家庭においても「スマートホーム」の最有力企業になり得る可能性が生まれてきている。
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