都市と離島に眠るエネルギーを生かす、下水バイオガスから海流発電まで:エネルギー列島2016年版(17)新潟(4/4 ページ)
新潟県で再生可能エネルギーと農業を組み合わせたプロジェクトが相次いで始まった。都市部では下水の汚泥から作ったバイオガスでイチゴを育て、離島では太陽光パネルの下でブロッコリーを栽培中だ。近海の海流発電や浄水場の小水力発電、工業団地では木質バイオマス発電所の建設が進む。
沿岸地帯に巨大なメガソーラー
太陽光発電でも巨大なプロジェクトが動き出した。新潟市の海沿いに広がるゴルフ場の開発予定地だった場所に、発電能力が55MWのメガソーラーを建設中だ(図11)。77万平方メートルの用地に合計20万枚の太陽光パネルを設置する。年間の発電量は6000万kWhを見込んでいて、1万7000世帯分の電力を供給できる。2018年6月の運転開始を予定している。
この計画を推進するオリックスは建設・造成工事の一部を地元の企業に発注して、地域経済の活性化に役立てる方針だ。発電所を見渡せる展望スペースを設けて環境学習に利用できるようにするほか、周辺に道路を整備して防犯灯や防犯カメラも設置することにしている(図12)。
新潟市の沿岸部は積雪量が少ないため、太陽光発電に及ぼす影響は小さい。実際に日本で初めての商用メガソーラーが2010年から、新潟港に近い昭和シェル石油の輸入基地の構内で運転を続けている(図13)。初年度の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は13%に達して、当時の全国標準12%を上回った。
雪国の再生可能エネルギーは太陽光からバイオマス、さらに海流発電も加えて広がりを見せる。県内の丘陵地帯の地下深くには、日本で有数の天然ガス田がある。その中心部の長岡市では国産の天然ガスを100%活用した火力発電所の建設プロジェクトも始まった(図14)。電力の供給基地として新潟県の役割は新たな方向へ進んでいく。
2015年版(17)新潟:「洋上風力と潮流発電に日本海で挑む、内陸には雪と太陽光と水力発電」
2014年版(17)新潟:「雪に負けず増え続けるメガソーラー、日本海の風力や波力も有望」
2013年版(17)新潟:「雪国で生まれる小水力とバイオマス、冬の太陽光は角度でとらえる」
関連記事
- ブロッコリーを栽培しながら太陽光発電、新潟・佐渡島で営農型の実証開始
新潟県の佐渡島で耕作地を利用した営農型の太陽光発電が始まった。農地を最大限に活用して収入を増やすモデル事業として土地の所有者が運営する。高さ2メートルの架台に薄膜の太陽電池パネルを設置した。年間に3世帯分の電力を供給しながら、パネルの下でブロッコリーなどの栽培に取り組む。 - ダムから浄水場まで落差110メートル、小水力発電で240世帯分の電力
新潟県の柏崎市で浄水場の構内に建設した小水力発電所が運転を開始した。山間部のダムから低地にある浄水場まで、110メートルの落差で流れてくる水力を利用して発電する。柏崎市と発電事業者が共同事業方式をとり、水力を提供する柏崎市は年間に480万円の収入を得る。 - 木質バイオマス発電所を自治体が誘致、港の近くで1万1000世帯分の電力
エネルギー産業の拠点づくりを進める新潟市は、大型の港に併設する工業団地に木質バイオマス発電所を誘致した。福島県で運転中の発電所と同様の設備を建設する計画だ。燃料は新潟県内の森林組合から未利用木材を調達するほか、港の機能を生かして海外のパームヤシ殻も輸入する。 - 日本産の天然ガス100%の火力発電所、年間20万世帯分の電力を2018年から
国内で最大級のガス田がある新潟県の長岡市で国産の天然ガスを100%燃料に使った火力発電所の建設計画が動き出した。発電能力は8万5800kWで、2018年7月に運転を開始する予定だ。年間に最大で20万世帯分の電力を供給できる。新電力でシェア2位のF-Powerが全量を買い取る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.