需給過不足や調達費用を補償、電力の安定供給を支援する新保険:エネルギー管理
発電所の罹災や計画ミスにより電気の需給が計画値を外れた場合、電力事業者には不足分や余剰分を市場で売買する必要が生じる。損害保険ジャパン日本興亜は、発電事業者・小売電気事業者向けに、こうした電力需給の過不足とそれによる調達費用を補償する「電力安定供給費用保険」の販売を開始した。
損害保険ジャパン日本興亜は、発電事業者・小売電気事業者向けに需給の過不足と調達費用を補償する「電力安定供給費用保険」の販売をこのほど開始した。発電所の罹災や計画ミスにより電気の需給が計画値を外れた場合、不足分や余剰分を市場で売買する必要が生じるため、その調達費用などを保険で補償する。
発電所の罹災などにより需要に対して必要な発電量を確保できない場合、発電事業者には他の発電事業者から電気を調達してくる義務が発生する。その調達費用は自前での発電コストに比べて高額になることが通例であるため、発電事業者にとっては大きな負担となる。
また、電力の小売全面自由化後、発電事業者および小売電気事業者には、30分単位で事前に定めた計画値に基づいて電気を供給することが求められており、乖離が生じた場合はその差分をインバランス料金として送配電事業者に支払う義務も発生する。この料金が発電コストの3倍になることもあることから、事業者の事業運営上のリスクとなっており、経営を圧迫する可能性がある。
同社が今回始めた電力安定供給費用保険の補償対象は、発電事業者が自社所有の発電所、小売電気事業者は供給元の発電所となる。電力の調達費用や調達にかかる追加発生費用、インバランス料金を補償し、その補償範囲によりA、B、Cの3プランを用意している。Aの調達費用(エコノミー)プランでは「電気的・機械的事故」の場合補償する。Bの調達費用(オールリスク)プランは電気的・機械的事故のほか「火災・落雷・爆発」「外部からの衝突など」「風災・ひょう災・雪災」「その他の不測かつ突発的な事故」「水災」が補償範囲となる。Cの調達費用+インバランスプランはBプランの補償範囲に「計画ミスを含むインバランス」「その他不測かつ突発的な事由によるインバランス」が加わる(図1)。
同社では電力自由化が進んでいる欧州での同商品の引受けが豊富な英国ロイズのSOMPOキャノピアスと連携し、今後もの電力自由化の動向や事業者のニーズに合わせて商品をさらに進化させていく方針だ。
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