日本で4番目に広い町に、蓄電池を備えたメガソーラー:自然エネルギー
北海道の太平洋沿岸に広がるゴルフ場の跡地で巨大なメガソーラーの建設プロジェクトが始まった。2017年11月に運転を開始して年間に6300世帯分の電力を供給する計画だ。蓄電池を導入して電力の安定供給を図るほか、地形に合わせて太陽光パネルを設置できるように3次元対応の架台を採用する。
メガソーラーの建設地は北海道の南部の新ひだか町にある(図1)。新ひだか町は日本全国に700カ所以上ある町の中で面積が4番目に広く、そのうちの84%を森林が占めている。森林のあいだに点在するゴルフ場の1つが巨大なメガソーラーに生まれ変わろうとしている。
太陽光発電事業者のスマートソーラーがゴルフ場の跡地に「新ひだかソーラーパーク」を建設する(図2)。発電能力は17MW(メガワット)で2017年11月に運転を開始する予定だ。年間の発電量は2260万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して6300世帯分に相当する。新ひだか町の総世帯数(1万1900世帯)の半分以上をカバーする電力量になる。
発電した電力は固定価格買取制度で売電する方針だ。制度が始まった2012年度に認定を受けたため、買取価格は1kWhあたり40円(税抜き)を適用できる。年間の売電収入は9億円にのぼり、20年間の累計では180億円に達する見通しだ。スマートソーラーは全国各地にメガソーラーを拡大中で、現在までに14カ所で合計27MWを稼働させた。さらに新ひだか町を含めて14カ所で合計150MWの開発を進めている(図3)。
新ひだかソーラーパークには蓄電池も併設する。蓄電容量が9MWh(メガワット時)もある大規模なリチウムイオン電池で、天候による発電量の変動を吸収する目的だ。国から「再生可能エネルギー接続保留緊急対応補助金」を受けて導入する。
北海道では太陽光の発電量が増加して地域の電力需要を上回る可能性がある場合には、電力会社が発電事業者に対して出力の抑制を求めることができる。出力の抑制分を蓄電池に充電すれば、売電以外の用途に生かすことが可能になる。北海道の東部から南部にかけては日射量の豊富な地域が広がっていて、新ひだか町でも全国平均を上回る日射量が期待できる(図4)。
スマートソーラーはメガソーラーの用地になる南向きのゴルフ場の地形を生かすため、太陽光パネルを設置する架台を独自に開発した。「スマートアレイ2X」と呼ぶ3次元で調整が可能な架台で、平坦でない場所にも一定の傾斜角で太陽光パネルを設置できる。
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