東京電力のデータ通知の遅延は改善せず、年内の問題解決むずかしく:電力供給サービス(2/2 ページ)
5月に表面化した東京電力によるデータ通知遅延の問題は、3カ月が経過した現在も改善の兆しが見えない。利用者に電力使用量を通知できていない件数は8月19日の時点で1万8500件にのぼっている。問題の原因になっている託送業務システムの不具合は年内に解消できない可能性が高まった。
約3000件は電力使用量を確定できず
東京電力は託送システムの不具合を解消する恒久対策チームの要員を10人から20人に増やして、10月末をめどに問題解決を目指していた。しかしメーターの登録情報を正しく反映できる対策を完了できるのは早くても年内いっぱいかかる見込みだ。来年まで持ち越してしまう可能性もある。
その一方で電力使用量を正確に把握できないと、小売電気事業者は利用者に対して電気料金を請求できない。4月分と5月分を合わせて月間の電力使用量を確定できていない件数が2949件にのぼっている。東京電力PGは電力使用量の確定方法を小売電気事業者と協議中だが、協議を完了できたのは3分の1程度にとどまり、残る2000件近くは現在も電力使用量を確定できない状況のままだ(図4)。
しかも協議の対象になっている件数のうち8割は同じグループの東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)が相手である。東京電力EPが従来の規制料金メニューから新しい自由料金メニューへ契約を変更したケースで、新規参入の事業者と競争しながら維持した顧客が対象になっている。
東京電力PGは7月から小売電気事業者と協議を開始した。8月17日の時点では8月3日と比べて対象件数がわずかに減少したものの、協議が完了した件数も減っていて、未完了の件数は1882件から1920件へ増加している。すでに4月・5月分は電気料金の請求が2カ月以上も遅れている状態で、利用者と事業者の双方に混乱を与えている。
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