電化していない区間を蓄電池だけで走る電車、JR九州が10月に運行開始:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
全国各地の電化していない鉄道の路線では、石油を燃料にディーゼル車が走っている。JR九州は環境対策の一環で、蓄電池だけで走行できる電車の営業運転を10月に開始する。蓄電池に充電した電力とブレーキ時の回生エネルギーを使って、約10キロメートルの非電化区間を2両編成で運行する。
電力の流れを車内の液晶画面に表示
これまで非電化区間ではディーゼル車を走らせてきた。石油を燃料に使うためにエネルギーの消費量とCO2(二酸化炭素)の排出量が多く、走行時にはディーゼルエンジンから排ガスが出る。動力源が電力に替わることでエネルギー消費量とCO2排出量を削減でき、排ガスもゼロになる。
DENCHAでは客室の照明にLEDを採用して電力の消費量を抑制する。さらに車内の冷暖房効果を高めるために、押しボタン式で開閉する「スマートドア」を導入した(図4)。ドアの上部に設置した液晶画面にスマートドアの操作方法を表示するほか、電力の流れを解説したエネルギーフローも表示する。
JR九州は10月の営業運転開始に向けて、4月から若松〜折尾駅で試験走行を実施して性能や安全性を確認してきた(図5)。さらに10月1日には同じ筑豊本線のうち電化されている直方駅と中間駅のあいだでDENCHAの試乗会を開催して、利用客に乗り心地を体験してもらう予定だ。
鉄道各社は大量に消費する電力を削減するために、省エネ型の車両の開発・導入を長年かけて進めてきた。JR九州でも長距離を走る特急電車と短距離を走る近郊電車の双方に省エネ型の車両を投入している(図6)。ブレーキ時にモーターを発電機に切り替える回生ブレーキのほか、加速時の電力を半導体で効率よく制御できるVVVF(可変電圧・可変周波数)方式のインバータを搭載して走行中の電力消費量を削減する。
1987年に分割・民営化する以前の国鉄時代に主力だった電車と比べると、JR九州の最新の省エネ型の車両では1両あたりの電力消費量が半分程度で済む設計になっている。
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