落雷で分かった火力発電停止の影響度:エネルギー管理(2/2 ページ)
2016年9月8日に東海地域で発生した落雷によって、中部電力の送電線の一部が機能を停止。その影響で愛知県および岐阜県で合計36万世帯が停止した。これに伴い「碧南火力発電所」が運転を停止したことで電力不足が懸念され、広域機関が他の電力会社4社に対し電力融通を指示する事態となった。
広域機関が4社に電力の融通を指示
碧南火力発電所は5機合計で出力410万kW(キロワット)を誇る国内でも最大級の石炭火力発電所である(図2)。1991年に1号機が稼働を開始して以降、2016年8月末時点までに累計2億トン、発電量に換算すると約6000億kWh(キロワット時)に相当する石炭を受け入れてきた。
「浜岡原子力発電所」の停止が続く中、落雷の影響で中部電力のベース電源として大きな役割を担っている碧南火力発電所も運転を停止したことで、一時的に同社管轄内が電力不足に陥る可能性が高まった。
これを受けて電力広域的運営推進機関は9月8日の14時に、東京電力パワーグリッド(東電PG)、北陸電力、関西電力、中国電力の4社に北陸電力に対して電力供給を行うよう指示した。指示の内容は14時30分〜20時の間に合計300万KWの供給を行うというもので、指示はこの後さらに2回続いた。2回目は同じ4社に対し20〜22時の間に合計294万kWを、3回目は東電PGのみに22〜22時30分の間に最大73.5万kWの電気を供給するよう指示している。
こうした電力融通により、中部電力管内が電力不足に陥る事態は防ぐことができた。停止していた碧南火力発電所は落雷翌日の9月9日に、全号機の運転を再開している。自然災害を起因とするものだが、送電線の離脱およびそれに伴う火力発電所の停止が、電力需給と系統安定に与える影響の大きさが顕在化した事例となった。
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