超大型風車が5MWの電力を作る、回転直径136メートルで暴風にも耐える:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
日立製作所が出力5MW超の大型風力発電システムを開発した。茨城県の風力発電所で試験運転を実施して2017年度に販売を開始する予定だ。従来の5MW機の風車よりも回転直径を10メートル伸ばして風を受ける面積を15%拡大した。平均風速が7.5メートル/秒未満の場所でも発電量を増やせる。
洋上でも有効な「ダウンウィンド風車」
新開発の風力発電システムでは従来機と同様に「ダウンウィンド方式」の風車を採用している。大型の風車をスムーズに回転させるためには、支柱(タワー)に対して回転軸(ローター)を傾けて風を受ける必要がある。通常の風車は前方から風を受ける「アップウィンド方式」が多く、やや下向きに吹く風を受けた場合に効率よく回転する(図4)。
これに対してダウンウィンド方式は風車の後方から風を受ける構造になっていて、やや上向きの風が吹く場所に適している。風見鶏が後方の尾で風を受けて向きを変えるのと同様に、機械で制御しなくても風の方向に動く点が特徴だ。風の向きに合わせて首を振る「フリーヨー(free yaw)」と呼ぶ回転運動である。このため横風を受けにくく、風力発電の事故の原因にもなる強風や乱気流を受け流す効果がある。
海に囲まれて国土が狭い日本では、風力発電に適した場所は陸上よりも洋上に広く残っている。陸上では年間の平均風速が5.5メートル/秒以上、洋上では6.5メートル/秒以上が風力発電を実施する条件になる。陸上の適地は北海道と東北の山間部に集中しているのに対して、洋上の適地は全国の近海に分布している(図5)。
ただし洋上では強い風と波の影響を受けるため、発電設備の安定性が重要な課題になっている。こうした点から現時点で計画中の洋上風力発電プロジェクトの大半は設備を海底に固定する着床式を採用している(図6)。
福島沖で実証中の浮体式の洋上風力発電プロジェクトでは、ダウンウィンド方式の「ふくしま未来」(発電能力2MW)とアップウィンド方式の「ふくしま新風」(7MW)が運転中だ(図7)。年内に稼働予定のダウンウィンド方式による「ふくしま浜風」(5MW)を加えて、3基の風力発電システムがどのような性能を発揮するかによって、国内の洋上風力発電システムの市場は大きく変わってくる。
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