産業用ドローンに最適なリチウムイオン二次電池を開発、正極材に工夫:蓄電・発電機器
NECエナジーデバイスは、業務用ドローン向けに高出力で安全性の高いリチウムイオン二次電池のプロトタイプを開発した。軽く長寿命化が実現可能だという。
NECエナジーデバイス(神奈川県相模原市)が開発した新たなリチウムイオン二次電池は、出力や安全性に加えてエネルギー密度を高め、ドローン(無人飛行機)の軽量化に貢献するとともに、長寿命化により運用面での経済性向上を可能にしたことが特徴である。
ドローン用として従来採用されているリチウムポリマー(Li-Po)二次電池に比べ、飛行可能回数が2倍以上となり、また低温での使用範囲も拡がるなど実用性能が向上している。これにより、空撮用や地形モニター用に加え、輸送用や農薬散布用など、本格的な実運用が可能となる。なお、同二次電池の実機による飛行性能試験は、国内ドローン分野で実績のある自律制御システム研究所(千葉市)の評価を受けているとする(図1)。
NECエナジーデバイスは同二次電池を、ドローンをはじめ、ロボットなどさまざまな用途の駆動用電源に活用できる製品として提供する方針だ。販売開始予定時期は、2017年度第1四半期。2018年度で20億円の売り上げを目指す。
ドローンに用いられる電源には、飛行時間や飛行距離を伸ばすため、電池容量の大型化と電池重量の軽量化、風が吹いている天候時も安定的な飛行を継続するための電力の高出力化、電池の運用コストを低減するための長寿命化などが求められている。
エネルギー密度を33%向上
今回開発したリチウムイオン二次電池は正極材として、比容量(単位質量あたりの電力容量)の大きな材料を開発・採用した。これにより、高出力時の重量エネルギー密度が同社従来比で約33%向上する。そのため、従来品と同じ重量で比較するとドローンの飛行時間や飛行距離が約33%延長でき、また従来品と同じエネルギー量で比較すると、サイズや重量を約25%小型軽量化することが可能だ(図2)。
また、電極の組成を最適化したことによる電極の低抵抗化により、エネルギー出力密度(単位質量あたりに取り出せるエネルギー)が同じく40%向上している。これにより、ドローンの急峻な上昇下降時でも、出力電流の追従性が向上し、モーター性能を十分に引き出すことが可能となり、気流の乱れに対する飛行安定性の確保にも威力を発揮。さらに飛行後における電池の温度上昇も低く抑えられる。低温においても高出力を維持できるため、マイナス10度までの低温環境下でも電池を加温することなく飛行が可能だ。
この他、電極材料や電解液、添加剤などの組み合わせを最適化することにより、充放電を繰り返した際の耐久性(容量低下特性)が従来比で10%以上向上した。これは、典型的なLi-Po二次電池の2倍以上となる。電池の長寿命化につながり飛行可能な回数も増加できるため、運用に必要な電池の購入数量が削減できる。この他、正極と負極を絶縁するセパレータに高熱に強いタイプを使用することで、高い安全性を確保した。
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