再生可能エネルギー20%超の電力、基本料金0円で全国7地域に:電気料金の新プラン検証シリーズ(38)(2/2 ページ)
電気料金の常識を覆す「基本料金0円」のプランを展開するLooopが新たに北海道・中国地域の単価を発表した。すでにサービスを開始している東北・東京・中部・関西・九州と合わせて全国7地域に拡大する。使用量に応じて課金する電力量料金だけのプランで、しかも単価は地域ごとに一律だ。
原子力が入る九州電力と電源構成の差も
家庭と比べて電力の使用量が多い事務所や商店向けの「ビジネスプラン」では、電力量料金の単価を1円/kWh高く設定した(北海道は2円/kWh高い)。電力会社が事務所・商店向けに提供している「従量電灯」の単価は家庭向けと同額のため、使用量の少ない事務所や商店だと「ビジネスプラン」のほうが割高になる場合がある。
Looopが試算した飲食店の例では、契約電力が8kVA(キロボルトアンペア)で月間の使用量が2183kWhの場合に、月額の電気料金が九州電力の「従量電灯C」と比べて4349円安くなる(図5)。資源エネルギー庁が一般的な飲食店のエネルギー利用状況を分析したレポートによると、月275時間の営業時間の居酒屋(床面積366平方メートル)では月間に平均2315kWhの電力を使っている。
九州電力も2016年4月1日から家庭向けと事務所・商店向けに新しい料金プランを提供している。家庭向けの「スマートファミリープラン」では基本料金が「従量電灯B」と同額で、電力量料金の3段目の単価を1.08円/kWh安くした(図6)。使用量の多い家庭が小売電気事業者に移行することを防ぐ対策だが、さほど魅力的な値引き幅とは言いがたい。
これに対して「スマートビジネスプラン」は基本料金を据え置きながら、電力量料金の単価を一律の22.63円/kWhに設定した。Looopの「ビジネスプラン」の24円/kWhよりも低いため、使用量が多い事務所・商店では電気料金が割安になる。契約電力が8kVAで比較すると、月間の使用量が1700kWhを超えてから九州電力の「スマートビジネスプラン」のほうが安くなる計算だ。
両社のプランは単価の差に加えて、提供する電力の電源構成にも違いがある。Looopは家庭を中心に太陽光発電の電力を高く買い取るサービスを実施して、再生可能エネルギー(FIT電気)の比率を高める方針だ。2016年4〜9月の計画値ではFIT電気を20%、そのほかの再生可能エネルギーを6%、合わせて26%を再生可能エネルギー由来の電力で供給する。
一方の九州電力は全国に先がけて原子力発電所を稼働させたことから、2015年度の電源構成のうち10%を原子力が占めている(図7)。再生可能エネルギーはFIT電気を加えて14%である。九州では太陽光を中心にFIT電気が増加中だが、2016年度からは原子力の稼働率が向上してFIT電気を上回る見通しだ。
家庭を中心に原子力による電力の購入を嫌う層は少なくない。他の地域と比べて九州電力の管内で「Looopでんき」の契約数がどれくらい伸びるか注目である。
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