木質チップが集まる製紙工場でバイオマス発電、240億円かけて14万世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
青森県の太平洋沿岸にある製紙工場で大規模な木質バイオマス発電所の建設計画が進んでいる。海外から輸入する木質チップやパームヤシ殻を燃料に、14万世帯分を超える電力を供給する。2019年6月に運転を開始する予定だ。バイオマス発電用のボイラーにはフィンランドの製品を採用する。
工場のエネルギーでイチゴの栽培も
八戸工場の木質バイオマス発電所はJFEエンジニアリングがEPC(設計・調達・建設)を担当することも決まった。中核になるバイオマスボイラーにはフィンランドのバルメット・テクノロジーズ(Valmet Technologies)の製品を採用する。
バイオマスや石炭を燃料に利用するバイオマス発電では、燃料の種類と発電規模によって最適なボイラーの種類が分かれる。バルメット社のボイラーは多品種の燃料に対応できる「CFB(循環流動層、Circulating Fluidized Bed)」と呼ぶ方式で、発熱量の低い木質バイオマスから発熱量の高い石炭まで効率よく燃焼できる点が特徴だ(図4)。
バルメット製のCFBボイラーは出力が10〜350MWの発電設備に適用できる(図5)。バイオマス発電で世界最大の260MWの導入事例を含めて250基の納入実績がある。日本国内では提携先のJFEエンジニアリングを通じて八戸工場のバイオマス発電所の建設が最初のプロジェクトになる。
三菱製紙は2004年から八戸工場でリサイクル発電に取り組んできた。製紙工程で発生する廃棄物(ペーパースラッジ)や回収した廃タイヤを燃料に利用して、作り出した電力と熱を製紙工程のエネルギーに還元する仕組みだ(図6)。廃棄物の削減とCO2(二酸化炭素)の低減に生かしている。
一方では主力商品の洋紙の市場が縮小して事業構造の転換を迫られている。新たなバイオマス発電事業のほかにも、工場で発生するエネルギーや資材を活用してイチゴを栽培する実証実験を2014年に開始した(図7)。
イチゴを栽培するビニールハウスの照明や温度制御に工場のエネルギー(電力や蒸気)を利用する。栽培用の床やプランターには工場の廃材を活用して、資源をリサイクルしながら新規事業を創出する取り組みだ。
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