バイオマス発電から海洋ドローンまで、福島で進む実用化プロジェクト:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
福島県の太平洋沿岸地域の復興を促進する「福島イノベーション・コースト構想」の取り組みが広がってきた。地元の企業を中心に34件にのぼる新技術の実用化プロジェクトが国の支援を受けて始まっている。ロボットやエネルギーをはじめ6つの分野を対象に2018年度まで実施する計画だ。
海洋調査用のドローンも開発
2つ目のエネルギー分野のプロジェクトは、太陽光発電などの再生可能エネルギーを含めて地域内のエネルギーを最適に制御できるシステムの実用化である。デジタルグリッドルーター(DGR)と呼ぶ装置を利用する点が特徴で、複数の電源を選択しながら工場に電力を供給する(図3)。停電が発生した場合でも自家発電機から電力を供給できる自律分散型のシステムになる。
いわき市内でガソリンスタンドを運営する佐藤燃料が開発を担う。2018年度までにDGRの標準機を開発して、2020年度以降に浜通り地域の製造業に展開していく計画だ。関連事業を含めて70人の雇用創出を目指す。
エネルギー以外ではロボットの分野でドローンを利用・開発するプロジェクトが多い。南相馬市に研究拠点がある日本原子力研究開発機構(JAEA)が楢葉町の千代田テクノルと共同で、ドローンを使って無人で放射線の分布状態を測定する技術を開発する。放射線を見える化できる小型・軽量のコンプトンカメラをドローンに搭載して、分布状況を3次元で可視化する試みだ(図4)。
海洋調査用のドローンを開発するプロジェクトもある。JAEAが海洋調査のウィンディーネットワークと共同で無人観測船を開発する計画だ。レーダーや光ファイバーを使った測定システムを無人観測船に搭載して、海中の放射線分布の測定や海底の地形の測量に利用する(図5)。海に囲まれた日本で無人観測船の市場を開拓していく。
福島イノベーション・コースト構想の実用化プロジェクトに対しては、国から福島県などを通じて費用の3分の2あるいは2分の1を補助する。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを当面の目標に、浜通り地域に先端的な産業を創出して復興を促進していく。
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