新エネルギー産業を福島・浜通りに、発電拠点が集まる「イノベーション・コースト」:スマートシティ
太平洋に面した福島県の浜通り地域では原子力災害によって10万人を超える住民が避難を余儀なくされた。原子力から再生可能エネルギーへ転換を図り、新しい産業が集まる「イノベーション・コースト」へ生まれ変わる構想が進む。浮体式の洋上風力や高効率の火力発電が中核の拠点を形成する。
国と県を中心に「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」が始まったのは2014年1月である。それから1年が経過して、具体的な施策が徐々に固まってきた。原子力の廃炉に関する国際的な研究・開発拠点を展開するほか、再生可能エネルギーや高効率火力発電を中心に新しいエネルギー産業を集積する計画だ(図1)。
特に検討が進んでいるのはエネルギー産業プロジェクトと農林水産業プロジェクトの2つである。3月中に第1次のプランをまとめて国や県の了承をとる予定だ。農林水産業プロジェクトは農業のスマート化やバイオマス資源の活用などが柱になる。
福島県では2040年までに県内の電力需要を再生可能エネルギーで100%満たすことを長期目標に掲げている(図2)。その中間目標として2020年に40%まで高める計画だ。すでに太陽光発電を中心に固定価格買取制度の認定設備が拡大して、発電規模は原子力の4基分に相当するレベルに達した。
洋上風力では世界の最先端を行く浮体式の発電設備が沖合20キロメートルの海域で実証運転を開始している。このほか石炭火力で最高レベルの効率を発揮するIGCC(石炭ガス化複合発電、Integrated coal Gasification Combined Cycle)による発電設備が県内の2カ所で2020年までに運転を開始する見込みだ。
バイオマスやLNG(液化天然ガス)の関連施設も建設が進み、発電装置や蓄電池などの関連産業が浜通り一帯に集まり始めた(図3)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに世界に類を見ない新しいエネルギー産業を集積して復興をアピールすることが1つの目標になっている。
東京オリンピック・パラリンピックでは国を挙げて水素エネルギーを活用する方針で、大量の燃料電池車や燃料電池バスが会場周辺を走る予定だ。福島県内で大量に導入した再生可能エネルギーによる電力を水素に転換して貯蔵・供給する「Power to Gas」もイノベーション・コーストの構想に含まれている。
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