電力が届かない場所にも自販機を、リチウムイオン電池で24時間稼働:蓄電・発電機器
JR東日本グループがリチウムイオン電池を内蔵した自販機を駅の構内に導入する。自販機と同じ高さのバッテリーユニットを接続して、電力を供給できない場所でも約24時間の稼働が可能だ。停電が発生しても飲料を販売できる。配線工事が不要なため導入コストを削減できるメリットもある。
JR東日本の100%子会社で飲料の販売を手がけるJR東日本ウォータービジネスが「バッテリー自販機」を開発した(図1)。2008年に立ち上げた飲料向けの自販機ブランド「acure(アキュア)」のリニューアルに合わせて、JR東日本の駅から導入を開始する。
バッテリー自販機にはリチウムイオン電池を内蔵した「バッテリーユニット」を付属する。自販機の右側に付いているトラッシュボックス(ビン・カン用のゴミ箱ユニット)と同じ縦長のサイズで、既存の自販機に接続して使うことができる(図2)。
内部にはリチウムイオン電池モジュール10基を内蔵している。蓄電容量は非公表だが、充電した電力で自販機を約24時間にわたって稼働できることを実験で確認済みだ。電力が足りなくなったら、専用の充電器を使って約6時間でフル充電の状態に回復する。
外部から電力を供給する必要がないために、どこにでも設置できる。配線工事が不要になって、自販機の導入コストを削減できる。11月上旬に東京都内で開催するイベントで初公開した後に、12月中にJR東日本の駅の構内で利用を開始する予定だ。駅の稼働実績をふまえて、2017年度から量産に入る。駅以外の利用も見込んでいる。
バッテリーユニットは古河電池と共同で開発した。古河電池は車載用や産業用のバッテリーを中心に、さまざまな方式の電池を製品化している。最近では持ち運びが可能なマグネシウム空気電池の製品化で話題を集めた(図3)。
4月に熊本県で地震が発生した時には、マグネシウム空気電池が非常用の電源に使われた。新たに開発した自販機用のバッテリーユニットも、被災地などで停電が発生した状況の中で適温の飲料を供給するのに利用できる。
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