最も普及する太陽電池で世界記録、カネカが変換効率24.37%達成:太陽光
世界で最も普及しているシリコン結晶太陽電池。そのモジュール変換効率で、カネカが世界最高となる24.37%を達成した。NEDOが進める日本の太陽光発電のコスト削減計画を前進させる成果だ。
カネカは2016年10月26日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにおいて、結晶シリコン太陽電池モジュールで世界最高となる変換効率24.37%を達成したと発表した(図1)。
太陽光発電の普及を広げる上で、欠かせないのがコストの低減だ。日本の太陽光発電システムのコストは諸外国よりも数割以上高いといわれている。これを引き下げるには設置費用や資材価格など、さまざまな面でコストダウンを図る必要がある。その中の1つである太陽電池モジュールの場合、コストを決めるのは変換効率と寿命、製造コストだ。
NEDOではこうした背景から、太陽電池のコスト削減に向け「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトを立ち上げ、高効率結晶シリコン太陽電池の開発を進めている。目標は2020年に業務用電力価格並みに相当する14円/kWh(キロワット時)、2030年に従来型火力発電並みの7円/kWh(キロワット時)である。
カネカが同プロジェクトにおいて24.37%の変換効率達成した太陽電池は、広く普及している結晶シリコン系だ。モジュール面積は1万3177平方メートルで、ヘテロ接合バックコンタクト型のセルを108枚使用した。モジュール内での抵抗損失を最小限にするためのセル間配線技術や、モジュールに照射された光の収集効率を高める技術などを新たに開発したことで達成したという。
カネカとNEDOは今回の成果について「世界で最も普及している結晶シリコン太陽電池モジュールにおいて高い変換効率を実現したことで、NEDOプロジェクトが掲げる発電コスト目標の達成に大きく前進した」と述べている。
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