電力会社の売上高が9000億円以上も減少、上半期は西高東低の決算に:電力供給サービス(2/2 ページ)
電力会社の上半期の売上高は10社の合計で前年から9000億円以上も減少した。西日本の4地域では夏の気温が上昇して販売量が前年を上回ったものの、東日本では販売量の減少が続いて売上高は大幅に縮小した。東京電力と中部電力は2ケタの減収率だ。10社のうち7社は営業利益も前年度を下回った。
関西電力は販売電力量が5.1%も減少
関西電力は東京電力や中部電力と比べると売上高の減少率は小さいが、2015年6月に実施した電気料金の値上げ分640億円が含まれている(図6)。その効果を除くと売上高の減少率は10%を超えて、東京電力や中部電力と変わらない状況にある。
関西電力にとっては再稼働した原子力発電所(高浜3・4号機)の運転停止が影響したことに加えて、販売電力量の減少が深刻だ。2016年度の上半期は6月を除いて前年よりも気温が高かったにもかかわらず、販売電力量が5.1%も減ってしまった(図7)。北海道電力の6.3%に続く減少率で、顧客の流出に歯止めがかからない。
各社が収益の悪化に苦しむ中で、九州電力は大幅な増益を記録した。本業のもうけを表す営業利益(個別決算ベース)は前年から347億円も増えて1000億円を超えた(図8)。東京・中部・関西の上位3社に迫る勢いだ。他社と同様に燃料費調整額の減少によって売上高は前年をわずかに下回ったが、前年の9月と11月に原子力発電所(川内1・2号機)が再稼働した効果が燃料費に換算して390億円にのぼった。
もう1つ九州電力の決算で注目すべき点は、再生可能エネルギーによる電力の購入量が大幅に増えていることである。特に太陽光発電による電力の購入量が前年と比べて33%も増加した(図9)。
風力など他の再生可能エネルギーを合わせると、九州電力が発電・受電する電力量のうち11%を占めるまでに拡大している。揚水式を除く水力を加えると21.4%に達して、国の2030年度の電源構成の目標(再生可能エネルギーで22〜24%程度)に早くも近づいてきた。
ただし電力会社が固定価格買取制度を通じて購入する電力は利益には大きな影響を与えない。電気料金に上乗せする賦課金と国からの交付金が収入になる一方で、企業や家庭からの買い取りと国に納める納付金が同程度の規模で費用に含まれるためだ。
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