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アンモニアで工業炉をCO2フリーに、燃焼技術の課題をクリア省エネ機器(2/2 ページ)

燃焼してもCO2を排出しないことから、化石燃料の代替として注目されているアンモニア。しかし燃焼時に窒素酸化物(NOx)が発生するという点や、伝熱強度が弱いという点が実用化課題となっている。大陽日酸と大阪大学は、工業炉におけるアンモニアを燃料について、窒素酸化物の発生を環境基準以下まで抑制し、同時に火炎の伝熱強化を実現する燃焼技術の開発に成功。課題解決に道筋をつけた。

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メタン燃焼と同等のふく射強度を実現

 その結果、バーナーの燃料に単純にアンモニアを混合して酸素富化燃焼した場合、火炎温度の上昇に伴ってNOx生成量が増加するという課題があるが、火炎温度の上昇によるNOx生成を最小限に抑制するには、段階的に炉内の雰囲気を巻き込むことで火炎温度を均一化する多段燃焼と、酸素富化燃焼を組み合わせた燃焼技術が有効であることを明らかにした。

 この技術により、10kWモデル燃焼炉では酸素富化バーナを用いて火炎ふく射を強化すると同時にNOx排出濃度を大幅に低減し、現行の環境基準をクリアするアンモニア燃焼による工業炉運転を実現した。火炎ふく射の強化に関する検証については大阪大学と共同でアンモニア燃焼のふく射強度の空間分布計測を行い、酸素富化燃焼を適用することで炉内全体に天然ガスの主成分であるメタン燃焼と同程度以上のふく射強度を実現可能であることを確認した(図2)。


図2 アンモニア酸素富化燃焼、メタン−アンモニア酸素富化燃焼、メタン空気燃焼におけるふく射強度の比較 出典:JST

 研究グループは、今回の開発により素形材産業を支える工業炉に対して従来の化石燃料を用いることなく運転することが可能になり、CO2排出量を大きく削減できる可能性があるとしている。今後は、工業炉の実生産に適用可能な規模である100kWモデル燃焼炉で火炎ふく射の強化手法と低NOx化手法のスケールアップに関する検証を行い、工業炉における開発目標達成の見通しを得ると同時に、アンモニア燃焼技術の工業炉分野への社会実装を目指す方針だ。

 なお、この研究は内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における「エネルギーキャリア」の委託研究課題「アンモニア直接燃焼」において実施。一部は平成25年度 JST戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)の委託研究「エネルギーキャリアとしてのアンモニア高効率利用に関する革新的基盤技術」において行った。

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