太陽光発電は2円程度の引き下げに、2017年度の買取価格:自然エネルギー(3/3 ページ)
2017年度に改正する固定価格買取制度の運用に向けて、再生可能エネルギーの種別に決める買取価格の検討が始まった。注目の太陽光発電ではシステム価格の低下や設備利用率の上昇を理由に2円程度の引き下げになる見通しだ。風力発電やバイオマス発電の買取価格も下げる可能性がある。
風力発電は3年間で買取価格を低減
風力発電の買取価格も2017年度から数年先まで決定する。住宅用の太陽光発電と同様に価格を低減させることが前提になっている。風力発電では発電能力が7500kW以上の大規模な設備になると、買取制度の認定を受ける前に環境影響評価(アセスメント)の手続きを完了しなくてはならない。
手続きの完了までに標準で3年程度かかるため、事業者にとっては3年先の買取価格がわかっていると事業化を判断しやすくなる(図9)。政府は2017年度の買取価格を決定するのと同時に、2018年度と2019年度の買取価格も確定させる方針だ。
価格決定の根拠になるシステム費用を見ると、年度ごとにばらつきはあるものの、おおむね低下する傾向にある(図10)。ただし固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した件数が少ないために、このデータだけで価格を引き下げる判断はむずかしい。
もう1つの根拠は設備利用率である。現行の買取価格は陸上の風力発電の設備利用率を20%で想定して決めたが、2011年以降に運転を開始した風力発電では24%台に上昇している(図11)。年間の発電量が2割も多くなるため、それに合わせて買取価格を引き下げることは妥当だ。
2016年度の買取価格は20kW以上の風力発電設備に対して22円に設定した。これを2019年度に18円前後に低減させる案が考えられる。すでに環境影響評価の手続きに入っている案件も数多くあるため、2017年度と2018年度は中間の価格を設定するか、あるいは事業者の導入意欲をそがないように2016年度の価格のまま据え置くか、どちらかの判断になる。
残る中小水力・地熱・バイオマス発電の買取価格については11月中に検討を開始する予定だ。いずれも風力発電と同様に、2017年度から数年先までの買取価格を一括に決める。中小水力発電と地熱発電は現在のところ導入量が少ないために買取価格を据え置くことが確実だが、バイオマス発電は導入量が増えてきたことから価格を引き下げる可能性がある(図12)。
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