航続距離の不安を解消できるか、日産・NEDO・兼松がEV実証にチャレンジ:電気自動車
NEDO、日産、兼松などはEVの普及に注力する米カリフォルニア州で、急速充電器や誘導システムを増やし、EVユーザーの行動範囲の拡大を目指す実証実験を開始した。電気自動車(EV)の普及課題の1つに、ユーザー側の航続距離の制約に対する不安があるといわれている。充電インフラの整備によって、こうしたユーザーの不安をどの程度解消できるかを検証していく狙いだ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日産自動車、Nissan North Americaおよび兼松は、カリフォルニア州政府とEV充電事業者のEVgoの協力のもと、同州北部都市圏で電気自動車(EV)の行動範囲拡大を目的とした共同実証事業「DRIVE the ARC」をこのほど開始した。この実証事業を通じて、EVユーザーの行動変化を分析することにより、都市間に設置する急速充電器や誘導サービスシステムの有効性を実証し、EVの普及促進に生かす狙いだ(図1)。
カリフォルニア州は、2025年までに150万台のZEV(Zero Emission Vehicle)普及を目標に掲げ、州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーに対して、一定比率のEVやプラグインハイブリッド車などの販売を義務付けている(ZEV規制)。さらにEV購入者は優先レーンの通行許可が得られるといった優遇措置を充実させるなど、米国の中でも特にEV普及に注力している。その結果、自家用EVの販売台数が最も多い州となっている。
しかし、EVの普及が進むカリフォルニア州でも、EVの利用は主に通勤や買い物など近距離移動に限られており、行動範囲は充電インフラが比較的整備されている都市内に集中している。近距離移動に限られる大きな理由として、航続距離の制約というEV特有の心理的不安(Range Anxiety)があり、これがEV普及の大きな足かせになっているといわれている。こうした背景から、NEDOはEV利用者の行動範囲拡大に向けた実証試験に着手した。
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