CO2と再エネ水素でメタンを製造、産官学の連携組織で実用へ:自然エネルギー
化石燃料の使用量削減に寄与する新技術の開発を目指す産学連携組織が発足した。東京大学生産技術研究所、産総研、日立造船、日揮、エックス都市研究所は「CCR研究会」を設立。産業界が排出するCO2と、再エネ由来の水素を活用したメタン製造技術など、温暖化対策や再エネ普及につながる新技術の研究開発および社会的意義の周知に取り組む計画だ。
東京大学生産技術研究所、産業技術総合研究所、日立造船、日揮、エックス都市研究所は2016年11月17日、二酸化炭素(CO2)や再生可能エネルギーを利用した水素製造技術の研究開発を目的に「CCR(Carbon Capture&Reuse)研究会」を設立したと発表した。
日本でも批准された「気候変動枠組条約第21回締約国会議」(COP21)では、産業革命以前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑えるという目標が定められた。一方、この目標を達成するためには、現状よりも2倍の速度でCO2を削減する必要があり、より高度な化石燃料の使用量削減に貢献する技術が求められている。
CCR研究会ではこうした背景から、産業界から排出されるCO2と、再生可能エネルギーを利用して生産される水素を組み合わせた代替エネルギー提供技術の研究開発を進め、化石燃料の使用量削減への貢献を目指す。
具体的な取り組みとしては、以下の4項目を挙げている。1つ目が回収したCO2と、再生可能エネルギーの電力を利用し電気分解で製造される水素を反応させて、メタンなどの燃料を製造し、熱エネルギーに役立てる技術の開発(図1)。2つ目が再生可能エネルギーの供給変動の平準化と、それにより生じる余剰電力を燃料の形で保存する技術の確立だ。
3つ目は各産業におけるCO2の経済的な分離・回収方法、再生可能エネルギーと燃料製造プロセスの合理的な運用方法、分散型モデル、集中型モデルの検討など、再生可能エネルギーの多様性に応じたプロセスの検討である。4つ目はこれらの技術の社会実装を促進するプラットフォームの構築だ。CCR研究会では、こうした研究開発を通じて、2050年に向けた新たなエネルギー供給システムの構築に寄与することを目指すとしている。
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