追尾式の集光型太陽光発電、モロッコで実証開始:太陽光
住友電工はモロッコで集光型太陽光発電システムの実証運用を開始した。同システムは太陽を追尾しながらレンズで日射光を集めて発電する仕組みで、直達日射量が多く気温が高い地域に有効とされている。約5年間実証を行い、砂塵などの気象状況に左右されない、安定した発電システムの開発を目指す。
住友電工はモロッコ王国太陽エネルギー庁(Moroccan Agency for Sustainable Energy、略称MASEN)と実証契約を締結した「1MW集光型太陽光発電(CPV)プロジェクト」の設備がこのほど完成した(図1)。
住友電工は2013年4月に、モロッコ・カサブランカ郊外の同社グループ会社敷地内で実証実験を開始。2015年9月からはワルザザートのMASENの研究施設敷地内に20kW(キロワット)のCPVシステムを設置し、実証実験を行ってきた。今回の実証契約ではその規模を拡大し、CPVを用いたMW(メガワット)級の発電プラント(1MW)を建設し、運用実証を行う。総発電量の計測や品質分析を行い、気象や砂塵(じん)などの状況に左右されない安定した発電を目指す。実証期間は契約締結より5年間(2021年5月まで)。
アフリカ大陸北西部に立地するモロッコは、南部がサハラ砂漠に面し、高い日射量を有することから、太陽エネルギーの活用に大きな可能性を持っている。モロッコでは、自国内での電力自給率向上のためにこの豊富な太陽エネルギー資源を有効活用するため、2020年までに2000MW、2030年までに4500MWの太陽エネルギー発電設備を導入する政府方針が掲げられている。
発電プラントに採用しているCPVは、変換効率が高い化合物半導体の発電素子を用い、太陽を追尾しながらレンズで日射光を集めて発電する仕組みだ。変換効率は一般的な結晶シリコン太陽電池に比べて約2倍で、また発電素子の温度依存性がほとんどないことから、CPVは直達日射量が多く気温が高い地域で有効な発電システムとされている(図2)。
また、同社は集光型太陽光発電装置業界でトップレベルとなる厚さ約120mm(ミリメートル)、重量約8kg(キログラム)の薄型軽量モジュールを開発した。薄型で軽量なモジュールは、輸送時のモジュール積載効率の向上や現地設置作業効率の向上、また、太陽を追尾する架台に多く搭載できるなどのメリットがあり、発電システムのトータルコスト低減に貢献できるとされる。
住友電工では今回の契約締結を契機に、モロッコだけでなく中東諸国を初め世界各地の高日射地域でのCPV事業の展開を進めていく方針だ。
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